WELCOME TO THE PYRAMID
~ZEN-LA-ROCKがやってきた!(前編)
(Intro) JASRACの屋上にはピラミッドがある
一体何を言ってるんだ、と思われるかもしれないが、とある界隈ではたびたび話題になっていることだ。
2022年4月にも一人の男性からこんなツイートが発信された。
常々思っていたがJASRAC屋上のピラミッドは何なのだろうか? pic.twitter.com/M3wEThaj9m
— ZEN-LA-ROCK (@ZENLAROCK) April 13, 2022
ツイートの主は、人気ヒップホップユニット「FNCY」の一員としても活躍するラッパー・DJである ZEN-LA-ROCK さんだ。
ところで、ヒップホップやR&B、さらにこれらのルーツを形成するファンクやソウル、エレクトロの世界では古代エジプト文明モチーフがたびたび登場することをご存じだろうか。
有名なところでは ビヨンセ の衣装やアートワーク、
1999年にリリースされたラッパー Nas のアルバム『I Am…』のジャケット(本人がツタンカーメン化している)、
「ハイエログリフィクス」という名前のヒップホップグループすらあり、
*ヒエログリフ(Hieroglyph):古代エジプトで用いられた3種のエジプト文字のうちの1つ。
さらに古くは アース・ウインド&ファイアー のジャケット群などなど、
まさに「枚挙に暇がない」状態である。
ここでもう一度、ZEN-LA-ROCK さんのツイートを確認してみよう。
ZEN-LA-ROCK さんは、JASRACの屋上にピラミッドがある、ということは以前から気付かれており、たびたびその存在を意識していたが、ついにピラミッドへの強い関心を抑えきれずに思わずツイートしてしまった、という状況のように見受けられる。
こんなことを言うと、まるで、JASRACの屋上にあるピラミッドには「ヒップホップ・アーティストを魅惑して誘引する効果」でもあるかのような口ぶりではないか、とお叱りを受けるかもしれない。
しかしながら、ZEN-LA-ROCK さん以前にも同様の事象が複数確認されているのだ。
2022年2月、ジャパニーズ・ヒップホップ界のレジェンド達が、ピラミッドに引き寄せられる、という現象が確認されている。
(関連記事)
KENDRIX グループインタビュー
~Watusi、Zeebra、DJ WATARAI、DJ HASEBEが語るHIP HOPと著作権~(前編)
なお、上記記事内でも紹介されているが、Zeebra さんと DJ WATARAI さんに至っては、2021年12月にピラミッド内でDJプレイまで行っている。
さらにもう1件。
2022年2月、やはりヒップホップの世界から、ピラミッドの土台部分にゴールドの鋼鉄車両を横づけしたツワモノの存在も確認されている。
ラッパーSHOに聴く、ストリートとSNSと音楽のこと~地に脚を着けたまま世界へ~(前編)
やはり、JASRACの屋上にあるピラミッドには「ヒップホップ・アーティストを魅惑して誘引する効果」があるに違いない。
ましてや、ZEN-LA-ROCK さんは2012年に『LA PHARAOH MAGIC』というタイトルのアルバムもリリースしているジャパニーズ・ヒップホップ界のファラオだ。
ぜひ ZEN-LA-ROCK さんをピラミッドにお招きして、思う存分ピラミッドを体験していただこう。
ということで…、突然始まる新企画「WELCOME TO THE PYRAMID」。
ZEN-LA-ROCK さんのご登場です。
(プロフィール)
ZEN-LA-ROCK
1979年生まれ。
埼玉県川口市出身。
ラッパー、DJ。
2004年にソロアーティストとしてデビュー。
自身のレーベル「ALL NUDE INC.」を設立。
2010年にはキャップブランド「NEMES」のプロデュースを開始。
2017年に、G.RINA と 鎮座DOPENESS をフィーチャリングした楽曲『SEVENTH HEAVEN』をリリース。
この楽曲がきっかけとなって、2018年に G.RINA、鎮座DOPENESS と「FNCY」を結成。
アニメやアイドルへの楽曲提供なども手掛ける。
(Track 1) 古代エジプト文明と音楽
ZEN-LA さん、ピラミッドへようこそ!
いやー、これはすごいですね。何より見晴らしがいいので夜景も綺麗ですよね。
FNCY の『TOKYO LUV』というMVの撮影は、都内で夜景の眺望が良いところを探して行ったのですが、ここを知っていたら撮影で使わせていただきたかったです。
ZEN-LA さんがプロデュースするキャップブランドの名称「NEMES」は「ファラオの頭巾」という意味だと思います。
『CLASIXXX na NIGHT』では「駅近ピラミッドG/E/T」、『MOON feat. G.RINA』では「月の砂漠のピラミッド」など、ZENーLA さんの楽曲のリリックにもピラミッドが頻繁に登場しています。
我々がこうしたモチーフに惹かれる理由というのはどういうところにあると思いますか。
’70sとか’80sのソウルミュージックなどのジャケットとかを見ると、こういう要素はかなりレギュラーなものとして入っていますよね。
単純に見た目がかっこいい、というのもありますが、ピラミッドって現代科学でもどうやって作ったかわかんない、宇宙人が作ったんじゃないか、とか、金じゃないのに金色にみえる、とか。とにかく宇宙的で神秘的ですよね。
結局そういうのって、ちょっと音楽聴いて現実逃避、みたいなこととつながっているのかなと思います。音を聴いてすごく宇宙的なものを感じたりとか。
鎮座DOPENESS さんも FNCY のインタビューで、エジプトに行きたいとおっしゃていました。
みんな好きだと思いますよ。FNCY のMVをエジプトで録るか、って話もあったんですけど、どう考えても予算が足りなかったっていう。
そりゃ行きたいですよね、仕事で行けるなら。
エジプト大使館の方がご覧でしたらぜひお声がけください(笑)。
まあ、今回はそれでここに呼んでいただけたんで。好きでよかったなあ。
(Track 2) DJになりたい青年がラップするまで
現在の音楽活動に繋がる原体験のことをお聴きしてもよろしいですか。
中学・高校のときにDJブームっていうのがあって。
地元は西川口なんですけど、中学・高校と東中野の学校に通っていて、いわゆる半分東京、半分埼玉みたいな生活だったんですけど。
DJブームに付随する音楽っていうのは、やっぱりヒップホップがかなりの率を占めていたんで、新宿や渋谷のレコード屋に通うようになりましたね。
レコード買うためにバイトして。
バイトは高校生から?
年齢詐称して中学のときからバイトしてましたね(笑)、レコード買いたくて。
そのころラップは自分がするものとは思ってなくて、DJになりたかったです。
リアルタイムのヒップホップももちろん好きで聴いてましたけど、高校生くらいかな、マッチョなヒップホップには自分を投影できなくなってきて。
古いヒップホップのパーティー性というか、ディスコ的な、ダンスミュージックみがある、そういう音楽的な要素が面白いなと思っていて。
さらに連なるファッションとかグラフィティとか、そういうヒップホップカルチャーにどんどん夢中になっていって。
そういうことを発信しているのが代々木公園とかでやっていた「HIP HOP最高会議」っていうブロック・パーティなのかなぁ、なんて思って、そこの門を叩いたというか。
*ブロック・パーティー:70年代のニューヨークなどで、街区(ブロック)の住民が公園などに集まって開催していたコミュニティ単位での音楽イベント。レコードをかけるDJ、掛け声などで場を盛り上げるMC、そしてダンサーなど、ヒップホップの起源を構成する要素の一つといわれる。
圧倒的に若い参加者だったとか。
思ってたよりもそんなに大きなパーティーではなかったというか。
90年代の、ちょっと上級者向き?なコミュニティだったと思うので、そういうところにいきなり見ず知らずの、明らかに若いやつが急に来た、ということで。
みなさん「どうした? 何見てきた?」、いやフライヤー見てきました、「フライヤー見たって、大丈夫かお前」、はい大丈夫です、みたいな(笑)。
YOU THE ROCK★ さんと出会うのもその頃ですか。
*YOU THE ROCK★:ラッパー。1971年生まれ。1995年に結成されたLAMP EYE『証言』への参加などをきっかけに、LAMP EYEを原型とするユニット「雷」を1997年に結成。
「HIP HOP最高会議」が98年くらいで、そのころからユウさん(YOU THE ROCK★)のソロ作品が「雷」のハードコアなスタイルから、オールドスクール・ヒップポップをトリビュートするような作品になって。
友達と「YOU THE ROCK★ やばいね」みたいな話になり、ユウさんがいるクラブに行って、いきなりラブを伝えたっていうか。
そしたらあまり反応が芳しくなかったとか。
そりゃそうだよ、ですよね。
飲んでるところにクソガキ3人くらいで来て、ユウさんも「はあ?」みたいな。
でも覚えてくれたのかな。ここらへんの記憶は曖昧なんですよね。
自分が当時やっていたDJのルーティーンで、2 Live Crew の『We Want Some P***y』の替え歌をしてたんですけど、あるときユウさんから「レコーディングしてるから今すぐ来て、あれの歌入れに来い」って連絡があって。
全然意味がわからなくて、家埼玉だったし、「どこでやってるんですか?」って聞いたら「青山のスタジオだから、とにかく速攻で来い」って。
速攻で来いって言われてもね(笑)。俺んち、駅まで遠いんですけど涙みたいな。
けどそれでどーにか行って。なんだかわかんないけど、どうにかこうにかラップを、自分のヴァースを入れて、ってかんじですかね。
いま思うと、ユウさんがなんでそんなことを知っててレコーディングすることになったんだろうな、って…。いままであんまり気にしたことなかったなあ。
後編につづく。
後編は、ZEN-LA さんのソロデビュー前夜からデビュー後までのヒストリーと現在、将来のビジョンに迫ります。
TEXT:KENDRIX Media 編集部
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