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~世界で活躍する秘訣と著作権についての考察(後編)

Mayu Wakisaka インタビュー
~世界で活躍する秘訣と著作権についての考察(後編)

TWICE、SixTONES、NiziU etc…
世界で活躍するクリエイターMayu Wakisakaの今

前編では、Wakisakaさんが滞在されていたLAでの近況、音楽を志すきっかけとなった学生時代やアメリカ留学でのエピソードについて語っていただきました。

前編はこちら

後編では、日本に帰国して作曲活動がメインになっていく過程や、著作権に関する課題や期待についてお聴きしています。

(プロフィール)
Mayu Wakisaka

大阪府出身。
作詞作曲家、シンガー、ボーカルディレクターなど幅広く活躍。

TWICE、SixTONES、NiziUなどに楽曲提供し、自らもシンガーソングライターとして活躍。時代やアーティストにフィットした楽曲は、国内外で賞を受賞するなど、日本に留まらず世界からも高い評価を得ている。

2011年にアメリカ留学から帰国されてからは、どのような活動をされていたのでしょうか。

ライブハウスや生演奏をやっているバーなどに音源を送ったりしていたのですが、なかなか良い反応がなかったです。
海外では、オリジナル曲の『Once』がいくつか賞をもらったり、評価していただいたけど、アメリカでアーティストビザを取得するには実績が足りなかったので、まずは日本で実績を作らないと、と必死でした。

帰国後に痛感したことは、アメリカでは楽曲が良ければすぐに連絡が来たけど、日本は直接対面しないとなかなか信頼してもらえないんだな…と、文化の違いを感じましたね。

そんななかたまたま1軒、六本木のバーでライブさせてもらえることになり、そこのお客さんに「シルク・ドゥ・ソレイユ」でベースを弾いている人が来ていて、さらにその方から紹介してもらったのが、今も担当をしてもらっているソニー・ミュージックの鈴木(康大)さんです。

転機となる出会いがあった?

はい、転機でした。
今後の方向性を模索しているような状況のなかで、フィンランドのソングライティングキャンプに参加させてもらって、水を得た魚のように楽しかったです。

一人で作っていると、ここまではいい感じなんだけど、こっから先が思い浮かばないぃ…ってことがあるんですが、コライトでは、議論して一緒に作って行けるという強みと面白さがあると思います。

この時はまだ無名で本当はすっごく不安だったのですが、海外で、特にコライトで仕事をするには、「こいつできるな」っていう感じをハッタリでもいいから出さないとダメなんです。

そんな度胸は、留学時代に身に付けました。
授業でジャズのアンサンブルのボーカルをやっていて、ものすごく複雑なジャズのコードの中で、しかも、ものすごくうまい人達の前で、その場でメロディーを作らなきゃいけなかったんです。
その経験があったから、コードもジャズに比べて少ないポップスのトップラインなら絶対にできる、という自信はありました。
ジャズの先生にダメ出しされるメロディーはポップスでは正解なんじゃないかという思いもあり…。

参加したフィンランドのソングライティングキャンプって、アジアに楽曲を売り込むコンペのために良い曲を作る、というシンプルな目的があったので、曲ができあがったらあとはピッチングしてもらって、採用されたら誰かがリリースしてくれる。
曲を作ってからリリースするまでのお金のことを自分で心配する必要がない、というのがとても幸せでした。

その後は、TWICEのデビューアルバムに曲が採用されたりと、駆け出しの割には、トントン拍子に曲を使ってもらえていると思います。

いまトントン拍子と言っちゃいましたけど、コンペではそこそこ落とされますよ。
10曲書いて1曲採用されたら、それをとんとん拍子と言っている感じです(笑)。

海外でも活動されているWakisakaさんですが、著作権のことで何か違いを感じることはありますか。

海外の作家の友人から「作った楽曲が映画で使われた、DVDになった、やったーボーナスが入る!」という連絡が来るんです。

ボーナスというのは、映像作品に楽曲が使われる場合のシンクロフィーのことなんですが、日本で、JASRACに管理してもらう場合、それは定額でとても安いし、タイアップとか委嘱の場合は、使用料が免除になることも多いので、ずっともやもやしています。

世間的には、JASRACはめっちゃ取り立てる団体という印象だと思いますけど、作家からすると、全然逆で、『もっと取り立てて!』と思ってしまいます。

海外の作家と頻繁にコライトされているWakisakaさんのご意見はとても貴重です。思い描く理想像や打ち手といったものはありますか?

うーん、
✔ 使用料規程や取扱いを世界水準に照らして見直す。
✔ カルチャーを変える。新しいカルチャーを作る。
ってことでしょうか。

私の曲が劇場公開映画で使用されていて、その興行収入が〇億円突破!とかいう情報までチェックしてくれて、「Mayu、すごいね、おめでとう!」みたいなメッセージをくれる海外のコライト仲間もいるのですが、映画についても使用料が免除されちゃったり、すっごく安い規程額しか入ってこなかったりします。
自由に金額を設定できないにしても、興行収入に応じた規程額の設定があるなら、少しは良いのかなと思います。

海外では音楽を使ったら使用料を払うというのが当たり前です。
日本もすぐには難しいかもしれないけれど、今の考え方・文化を変える努力は必要だと思います。使うなら払う。シンプルだと思うんですけどね。

(参考情報)
・JASRAC管理楽曲をDVD等のビデオグラムに使用(録音)する際の「基本使用料」は、1曲1分まで800円(税別) ※別途「複製使用料」がかかります。
・JASRAC管理楽曲を映画に使用(録音)する際の「録音使用料」は、1曲5分まで50,000円(税別) ※別途「上映使用料」がかかります。 ※委嘱・タイアップの場合「録音使用料」は免除となります。

上記はいずれも内国作品(JASRACに直接信託された作品)の場合。
外国作品(外国団体との相互管理契約によって管理している作品)の場合、権利者が指定する額(指し値)となる(一部例外あり)。

楽曲を利用する側にとっては、一定の範囲内で使用料を支払わずに利用できることはメリットですが、作家の方からすると、納得できない部分はありますよね。

免除した分の使用料を他の利用で本当に回収できているのか、その検証は必要だと思います。

プロモーションしてくれるレーベルや広告代理店、音楽出版社の事情も分かりますので、出版社と作家、JASRACと出版社、作家とJASRAC、といった1対1ずつではなく、利用者も含めた関係者全体で、どうするのが最良なのか、どうすれば最大限の利益を確保できるのか、を話し合う必要があると感じます。

世界では、作詞家・作曲家は著作権管理団体のメンバーになるのがスタンダードですが、残念ながら日本ではそうではありません。
海外の作家の方は、著作権についてどのような考えをお持ちなのでしょうか。

アメリカに留学していた時には、授業で「ASCAP、BMIにはすぐに入れ」といわれました。
でも自分は契約時に必要なID(納税者番号)がなくて入れなかったんです。

アメリカから日本に帰国してJASRACに入ろうとしたら「もっと実績が必要です」と言われ「著作権管理団体と契約することのハードルの高さ」と「著作権管理団体に対するイメージや位置づけの違い」を強く感じました。

アメリカではほとんどの友人がASCAPかBMIのメンバーになっています。
ただ、アメリカの友人はASCAPやBMIに問合せしても全然答えが来ないよ、と言うのですが、私がJASRACに問合せをすると、とても早く丁寧に教えてくれて、すごく助かります。
この点は、メンバーが80万人とか100万人もいるASCAPやBMIとは違う良い点かもしれませんね(笑)。

それと、先日スティングが自分の楽曲の著作権を○百億円で売却した、というニュースがありましたが、海外の友人は全然「終活」とかじゃなくて、財テクとしてカタログを売ったりしています。
日本では自分の作品の著作権が色んな出版社に譲渡されてしまっているので、権利を手元に取り戻すにしても、交渉先が多すぎて現実的ではなかったりします。

自分の資産として運用できる権利の持ち方というものも、考えていかなければいけないと思います。

最後に、作家を志す若い方にアドバイスをいただきたいです。

最近若手作家から「自信のあった曲がコンペで落とされる。採用された曲と聞き比べても遜色ないのになぜ。」と聞かれることがあります。
確かに、とてもいいものを作ってるなと思います。

ただ、同じレベルの同質の良い作品を作った時に、キャリアが長い方が採用されやすいんですよね。
いいものを作りたいというクライアントからは、修正依頼・変更依頼が多いです。
その時、安心して頼める人かどうかが、勝負かもしれません。
作曲力だけでは難しくて、総合的な能力が求められます。言わば、総合格闘技です!

総合格闘技ですか?!

はい。あとは、やっぱり仲良くできない人とは一緒に仕事はできないから、日頃から作家同士の人間関係、信頼関係を作っておくのも重要かな。

仕事力とか人間力とかはどうしても経験が必要だったりするけど、それでもまだ音楽の世界に関しては、若い才能が入っていける要素があると思います。
若いうちは失敗も許されるし、目に留まってもらうためには、できるだけ馬鹿なことをしたほうがいいと思います。
クオリティーよりも、何これーっ!!と思われる方がいい。
コンプラ通るのか?というくらい突き抜けている方が。もちろん通らないとダメですけどね。

2時間に及ぶ長いインタビューに、丁寧に応えてくださいました。
深夜にも関わらず、一つ一つ言葉を選びながら的確な回答をくださり、仕事力・人間力の高さを実感しました。

今後のさらなる活躍が楽しみなMayu Wakisakaさん。
ぜひ、韓国の音楽賞「MAMA」でBest Composer of the Yearを受賞していただきたいです!

 

TEXT:KENDRIX Media 編集部

 

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