WELCOME TO THE PYRAMID
~ZEN-LA-ROCK がやってきた!(後編)
(Skit) 後編だよ
JASRACの屋上にある「ピラミッド」への関心を示したツイートがきっかけで実現した ZEN-LA-ROCK さんによるピラミッド訪問。
後編は、ZEN-LA さんのソロデビュー前夜からデビュー後までのヒストリーと現在、将来のビジョンに迫ります。
前編はこちら
(プロフィール)
ZEN-LA-ROCK
1979年生まれ。
埼玉県川口市出身。
ラッパー、DJ。
2004年にソロアーティストとしてデビュー。
自身のレーベル「ALL NUDE INC.」を設立。
2010年にはキャップブランド「NEMES」のプロデュースを開始。
2017年に、G.RINA と 鎮座DOPENESS をフィーチャリングした楽曲『SEVENTH HEAVEN』をリリース。
この楽曲がきっかけとなって、2018年に G.RINA、鎮座DOPENESS と「FNCY」を結成。
アニメやアイドルへの楽曲提供なども手掛ける。
(Track 3) ヒップホップ、遊びから仕事へ
YOU THE ROCK★ さんのレコーディングに参加してから2004年のソロデビューまでは?
ユウさんのサイドMC的な形でクルーの一員をさせてもらったり、「レッキンクルー」っていう友達のラップグループで、正式メンバーじゃないけど第四のメンバーみたいなのをやっていて。あと、同時期に「HIP HOP最高会議」の先輩たちと「KANI BASS」というグループもやっていて。
20歳とか21歳の学生で3つも掛け持ちしてると、自分のスペックではいっぱいいっぱいすぎちゃって。
さらにバイトしたり、彼女とデートしたり、友達と遊んだり、ちょっと手つかずみたいな状態になってユウさんにも怒られて。
それで、怖かったですけど先輩らに1回抜けさせてください、ってお伝えして。
そのときに思ってたのは、どれも人の土俵で相撲をとってるっていうか、他人のふんどしで相撲をとるっていうか。
全部他人のフォーマットじゃないですか。ユウさん、KANI BASS は先輩のプロダクションだし、レッキンクルー に関しても正式なメンバーでもないし。
就職活動も全然1ミリもしなかったし。同世代では MSC とか、NORIKIYO くんとかが出てきていたり。
*MSC:2000年に新宿を拠点に結成されたヒップホップクルー。中心人物の漢 a.k.a GAMI は1978年生まれ。
*NORIKIYO:ラッパー、トラックメーカー。1979年生まれ。
なんか自分でやらないとヒップホップで遊んでるだけで、参加できてないんじゃないかって気持ちになって、2004年に自主レーベルの「ALL NUDE INC.」を立ち上げるってところに行ったかな。ちょっといい話(笑)。
そこで、音楽で食べていこう、音楽でやっていこうと思った?
いや、音楽でやっていこうなんて全然思ってないですよ。
やっていこうというより、やばいな、参加できてないかもってぐらいの気持ちです。
そのときまだ24歳とかなんで、全然遊び足りてないですし(笑)。
実家を出て、先輩の家でルームシェアみたいなのをさせてもらって。
でも30歳くらいまで音楽では食えなかったですね。バイトをやめたのが30歳。
本当にありとあらゆるバイトをやりましたね。
最後の2010年ごろというのは、3年間という期間限定の派遣社員みたいなのが満了になるタイミングで。なんとなくそれって、半年前くらいから意識し出すじゃないですか。あと半年で終わりだって。
けど、その最後のほう、音楽の仕事でライブのお金も入ってきて、キャップのブランドもちょうど2010年くらいから始めてて。なんかちょっと人生初のほんの気持ちラージみたいな(笑)。月30万円くらいあったりとか、なんかそういう状況になってきて、そこで3年満期の仕事が終わり。
それからは、ライブしたりDJしたりとか、なんだかんだ手を変え品を変え。
ざっくりいうとそれから12〜13年くらい経っていまに至る、って感じですね。
キャップ:NEMES 232 NEMES×dokkoi “MOOD” CAP
Tシャツ:NEMES 234 NEMES×dokkoi “GOOD TIMES” RINGER T-SHIRT
トラックスーツ:モデル私物
※実際にはすべて ZEN-LAーROCK さんの私物です。
(Track 4) COMBINATE FUTURE
2017年にリリースされたアルバム『HEAVEN』は、それまでコラボしてきたゲストやプロデューサーとの関係性が蓄積されて、とても豪華な作品になっていると思います。
「手を変え品を変え」とおっしゃりましたが、ずっと一貫していて全部いまにつながっていると感じます。
あんまり気が合う人が少ない気がします(笑)。
ヒップホップが好き、っていっても、それっていまはまさに宇宙的な広がりじゃないですか。俺の好きなところって、結構「隅の隅」みたいな。マニアックだし、オタクで、ニッチで。
けどオタクで、ニッチで、それを普通にアウトプットするとそれってほんとにニッチなもので終わっちゃうな、と思ってて、何か見せ方を変えることによって、ニッチなものとかマニアックなものも、多少光が当たるんじゃないかなと思ってました。
結構長くやってる New Jack Swing だって、いまは ブルーノ・マーズ がやって、若い子でも New Jack Swing みたいなビートで歌っている子とかたまにいたりして、「へえ流行ってんだ〜」とか思ったり。こんなスタンダードなものになるなんて思わなかったですね。
*New Jack Swing:米国で1980年代後半から1990年代前半にかけて流行した音楽スタイル。R&Bとヒップホップを融合したような、メロディアスなボーカルとリズミカルな打ち込みのビートが特徴。
自分のキャリアの中でも数年に1度、キーになるような人が出てきてくれて。
例えばなんで New Jack Swing をやったかっていうと、JOY’N HAMMER っていうフラットトップなヘアスタイルのダンサーがいるんですけど。
彼らと一緒にパフォーマンスしよう、じゃあどうする?ってなったときに、New Jack Swing 以外の選択肢ないでしょ、だってこいつら New Jack Swing しか聴いてないんだもん、ということになり。じゃあプロデュースは grooveman Spot さんに頼もう、とか。
*grooveman Spot:DJ、ビートメーカー、プロデューサー。ZEN-LA-ROCK『ICE ICE BABY feat. JOY McRAW』のほか、ZEN-LA-ROCK『NEW JACK UR BODY feat. BTB』、ZEN-LA-ROCK×KIRIN『PURPLE JACK CITY』など、New Jack Swing な楽曲も複数プロデュースしている。
2015年には、韓国のラッパー KIRIN さんと New Jack Swing 全開のEP『THE FUNK LUV』をリリースしてます。韓国にも KIRIN さんという New Jack Swing やオールドスクールを追求し続けているラッパーがいることも驚きでした。2017年にリリースした『SEVENTH HEAVEN』では G.RINA さんと 鎮座DOPENESS さんをフィーチャーしていて、これが FNCY 結成につながっていると思います。
1998年頃にZEN-LAさんは、RAMMELLZEE さんから「COMBINATE FUTURE」という名前を授かっていると思いますが、ZEN-LA さんのこれまでの活動は「未来を組み合わせること」だと思いますので、すごく予言的な命名だなと思います。
*RAMMELLZEE(ラメルジー):1960~2010年。ニューヨーク出身の伝説的なビジュアルアーティスト。グラフィティだけでなく自らラッパーとしても活動し、黎明期からヒップホップのビジュアルとサウンドの両面に多大な影響を与える。
確かにいま「COMBINATE FUTURE」中って感じかもしれないですね。
1999年に大阪でイベントがあって、RAMMELLZEE さんにはそのイベントで初めて会って。次の日の朝にみんなで集まって「昨日の夜楽しかったですね」みたいな話をしていたら、自分は明らかに群を抜いて子供みたいなやつだったので、RAMMELLZEE さんに「そもそもお前はいくつなんだ」って聞かれて。
そのとき19歳とかで、そう伝えたら「えー、どういうことー? よかったら本名・リアルネームを知りたい」みたいな。
それで「小峰」(本名の名字)だって言ったら「じゃあお前は COMBINATE FUTURE な」って言われて、「えー、名前もらっていいんですか」ラッキーみたいな。
なので、「COMBINATE」は「小峰」から来ている、多分それ(笑)。
ええ?!ちょっと肩透かしのような、でもやっぱり RAMMELLZEE さんのセンスとビジョンはすごいな、というエピソードですね。
最後に、ZEN-LA さんの活動の今後の展望みたいなことをお聴きしたいです。
最近気付いたんですけど、来年(2023年)で ZEN-LA-ROCK が25周年なんですよ。
なので、5枚目のソロアルバムを出したいな、と。
いまって、DJしながら自分の曲もかなり歌えているし、そんなタイミングで迎える25周年ってかなりの節目だなって。
実は、1枚目と2枚目のアルバムはサブスクに上がっていないんですけど、原盤を持っている会社との連絡がうまく出来ていなかったりで…。3枚目からは自社原盤だったり共同原盤なのでサブスクに出せているんですけど。
なので、25周年のタイミングで過去音源サブスク全解禁とかもできるように、そこも整えたいですね。
5枚目のアルバムの共同原盤に興味のあるレーベルさんがあったらぜひお声がけください(笑)。
(Outro) ZEN-LA になりたい
KENDRIX Media では、ZEN-LA-ROCK さんのツイートを拝見して思わずDMを送ってしまったのですが、すぐに丁寧なご返信をいただき、今回のよく分からない行き当たりばったりな取材依頼にも快くご対応いただきました。
ZEN-LA さんの活動は、音楽仲間とのつながりが深化しながら拡張も続けている、という印象でしたが、そんな状況の裏付けとなっているであろうZEN-LAさんの人柄にすっかり魅了されました。
ぜひ ZEN-LA さんや FNCY の音源をチェックしていただきたいですが、入門編としてオススメしたいのは、2020年7月に配信リリースされている ZEN-LA さんのオフィシャルDJミックス『Nuthin’ But A Z Thang』です。
ZEN-LA さんの客演作品、FNCY の楽曲、音楽仲間の作品などを中心とした ZEN-LA さんによるDJミックスで、ZEN-LA さんはもちろんのこと、収録楽曲に参加している BTB特効 さん、CHICO CARLITO さん、Midas Hutch さん、G.RINA さん、鎮座DOPENESS さんによるここでしか聴けないスペシャル・シャウトなども収録されていて、ZEN-LA さんのこだわりやサービス精神、とにかく楽しいことをプロデュースする能力の高さを随所で体感できる素晴らしいショーケース音源となっています。
『Nuthin’ But A Z Thang』(mixed by ZEN-LA-ROCK)
Track 1:BTB『バイブレイション』
さらに最後、FNCYの名曲『あなたになりたい』のZEN-LAさんによるヴァースのリリックをご紹介します。
ピラミッドのことも織り込みながら、これまでの半生と現在の状況を端的に表す素晴らしいリリックとなっています。
初めはDJ 恥も掻き捨て
まさか今もRAPなんてもぅ夢みたいだぜ
だからそう決めたぜ奥の奥まで
重ねた年月 ピラみるぜ
BLOWされる何度目? 常に産まれたて
FNCY『あなたになりたい』(作詞・作曲:FNCY)より
TEXT:KENDRIX Media 編集部
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