『1of1』 Vol.2 CreativeDrugStore
「Wisteria」を作ってみんなとさらに仲良くなれた
「1of1」とは世界にひとつしかないもの/ことを指す言葉です。日本で「1of1」な活動をしている人たちに話を聞いていきます。いろんな人たちのいろんな言葉が記事として連なった時、バラエティ豊かでかっこいい日本の文化の層として表現できるのではないかと思い、連載企画を立ち上げました。
BIM、VaVa、in-d、JUBEE、doooo、Heiyuuの6人からなるクルー・CreativeDrugStoreが2023年12月に初のフルアルバム「Wisteria」を遂にリリースしました。ソロアーティストとしてさまざまなシーンで活躍する6人。それぞれが激動の20代を過ごし、互いにぶつかることもあった彼らは、なぜこのタイミングでアルバムを制作したのでしょうか? 「1of1」第2回となる今回は、アルバム「Wisteria」の制作を軸に、BIM、VaVa、in-d、JUBEEの4人にCreativeDrugStoreの過去、現在、未来、ヒップホップ観、クルーの意義などについて深く聞きました。
文:宮崎敬太 写真:雨宮透貴
自分たちで作った15曲がボツになった
――なぜこのタイミングでCreativeDrugStore(以下、CDS)でアルバムを制作しようと思ったんですか?
VaVa:2022年がCDSの10周年だったんです。これまでイベントやアパレルみたいな動きはあったけど、みんながそれぞれ音楽活動している状況だったので、逆に(CDSとしてアルバムを制作するなら)「このタイミングしかないよな」と思ったのは鮮明に覚えてますね。
in-d:当初は2022年の12月にアルバムを出す予定だったんです。BIMが音頭を取って、いろんなブランドとコラボしたり、1年間毎月何かしらCDSが動いてて、その最後にアルバムを出す、みたいな。
――10周年となる2022年をまるごと盛り上げるプランがあったんですね。
in-d:で、自分たちで15曲作って(ヒップホップレーベル・SUMMITのA&Rの)増田さんと(平林)錬くんに聴いてもらったんですよ。でもあまり良い反応が返ってきませんでした。
VaVa:渋谷のレンタル会議室でね。BIMは風邪ひいちゃってZoom参加だったけど、会議室の中はそれはもうものすごく気まずい雰囲気でした(笑)。
JUBEE:あの時はマジで心が折れそうだったなあ。
VaVa:俺は折れたよ……。だって15曲も作ったのにさ。
――その15曲はどのように制作していたんですか?
in-d:基本的には各々の家で各々で録って、データをLINEでやりとりしてました。
JUBEE:めちゃくちゃ頑張ったもんね。
BIM:(音楽の)趣味が違うんじゃないかとすら思いましたもん。むしろあの日は行けなくて良かった(笑)。
VaVa:でも『JENGA』のビートや、『Retire』と『Hi』は「Wisteria」に収録されました。だからよく聴くとこの2曲はラップの雰囲気が違うんですよ。
JUBEE:『Hi』で「2020グッバイ2021」とラップしてるので、その頃にはもう制作がスタートしてたんです。
in-d:2021年の前半だね。しかもその会議をした段階でCDSとして「POP YOURS」に出演することが決まっていたんです。
――なるほど。本来ならその15曲をベースにアルバム制作が本格化して、2022年5月の「POP YOURS」までには何曲かライブでやれるレベルには持っていけると想定していた、と。
in-d:そうですね。結果的に『Retire』と『Hi』もアルバムに入ったけど、ミーティングの時は全曲ボツくらいの雰囲気だったんです。そこからすべて作り直して「POP YOURS」に間に合わせるのはどう考えても無理だったので、『まずは1曲、「POP YOURS」でフックになる曲を時間をかけてしっかり作ろう』という話になりました。そこから毎週1回、増田さんと錬くんも含めてみんながBIMの家に集まって、アルバムを制作することになりました。それでできたのが『Taste Test』なんです。
戦隊みたく4人いるから、それぞれ色を出していこう
――「POP YOURS」で『Taste Test』を初めて観て驚きました。みなさんにポップなイメージを持っていたので、『Taste Test』を聴いて「こりゃどんなアルバムになるのか想像もつかないな」って良い意味で予想を裏切られましたね。
VaVa:それは嬉しい感想かもです。
JUBEE:でも俺は今でも「これがCDSのサウンドだ」みたいのってわかってないかも。
VaVa:なんかさ、俺らはソロでそれぞれやりたいことやってるじゃん。だからクルーではクルーでできることをやりたいっていうのがたぶんみんなの中にあった気がする。
JUBEE:あー、それはそうだね。ソロではCDSでやったビートは選ばないもん(笑)。
BIM:そこが一番だった。戦隊みたく4人いるから、それぞれ色を出していこうって。 むしろキャッチーさはまったく意識してませんでした。
VaVa:うん。(ラップを)どう(ビートに)乗せるかはかなり考えた。
BIM:4人が全曲ラップしてるもんね。
――どの曲もかなり複雑な掛け合いやフロウが入り乱れていますが、実制作はどのように進んでいったんですか?
VaVa:ボツになったにせよ、すでに15曲作ってたのに、いざBIMの家に集まってみたら「どうしよう?」「何から始めればいいんだ?」ってなりました(笑)。
JUBEE:なので増田さんと錬くんが13〜14時でビートを選んで、15時からリリックを書いて、みたいなタイムスケジュールを組んでくれたんですよ。書けた人から録って、みんなに聞かせる。
BIM:本当に初期の段階はそんな感じでしたね。慣れてきたら、各々ができない部分を自主的に作っていく、みたいな。
VaVa:初速はすごかったよね。みんな1日2〜3曲録ってた。
JUBEE:そうそう。すごい調子良かった。
――では制作で難しかった曲はありますか?
JUBEE:BIMの家で制作するようになってからは、停滞した瞬間はほとんどなかったよね。
VaVa:うん。でも難しいとは違うんですけど、個人的に『6ix Pack』ができるまではアルバムのコアをつかめてない感じがしてました。どの曲もかっこいいけど、シングルっぽい曲がないというか。なので『6ix Pack』ができた時はかなり上がりましたね。
各々ソロがしっかり確立してるからこそCDSは成立してる
――『6ix Pack』はトラックも変わってるし、リリックもユーモアもあって面白いですよね。
VaVa:この曲のテーマはBIMの家から帰る途中のタクシーの中で思いつきました。二子玉川の橋あたりであのビートを聴いてたら、「シックスパック」ってワードが浮かんできたんです。「あ、CDSも6人だ」「みんな(腹筋)割れてなさそうだな」「でもワンパックの6人が集まってシックスパックになったら面白くない?」と連想して、深夜だったけどすぐみんなにLINEしたんです。
――ラップする順番はどうやって決めたんですか?
VaVa:錬くんは常に客観的に俺らと楽曲を見てくれてるので、たとえば『6ix Pack』なら「BIMが1ヴァース目がいいんじゃない」と言ってくれて、「じゃあ自分はサビをやります」みたいな感じかな。今回のアルバムはどの曲でも、各々が見せ場を取り合うんじゃなくて、いかに曲を良くするかって意識で作業をしてました。
BIM:それで言うと、俺は『6ix Pack』のJUBEEのヴァースが良かったから、書き直したんですよ。
in-d:最初に書いたヴァースはもっと腹筋のこと歌ってたもんね。
BIM:そうだそうだ(笑)。俺はまずなんとなく書いてみんなに提示するスタンスでやってたんです。それが良かったらそのままで良いし、違ったら別のを書くくらいの気持ちでした。それくらい肩の力を抜いてたかもしれないです。
VaVa:肩の力が抜けすぎてて、突然ラーメンを作り出したもんね(笑)。アルバムの制作は基本的に13時から20時くらいまでやってたんです。みんな集中力が高まってきて、乗ってくるゴールデンタイムが16時くらいなんです。そこでいきなりキッチン行っちゃって。
JUBEE:1時間だけ抜けて(ゴルフの)打ちっ放しに行っちゃったりとかね(笑)。
VaVa:「Wisteria」の制作を通じてみんなさらに仲良くなった(笑)。
BIM:音楽を作る時、会議っぽい真面目な雰囲気って俺は意味ないと思ってるんです。と同時にいいか悪いかは別としてアイデアを思いつくスピードが結構速いほうかと思ってて。でもあえて言わないようにしてました。CDSの最初の5年間はみんな大学生だったりもしたから「俺がやらないと」と思ってました。だからほとんど俺が決めてたんです。そしたらいつのまにかアイデアがすぐ思い浮かぶようになって、それが自分のクリエイションのやり方として染み付いちゃいました。でも、俺がペラペラ喋り出すと仕切る雰囲気になって会議っぽくなってしまう。なので俺は今回サボるやつになることにしたんです。
――みんなアーティストとしても成長したし、人間としても互いに信頼しあえるくらいに成長したのかもしれないですね。
JUBEE:やっぱそれぞれソロ活動があるっていうのがデカかったと思います。みんなちょっと気持ちに余裕がある。だから楽しくできた。それが一番。このアルバムでかましたい気持ちはあるけど、稼いでやろうとは思ってない。そうじゃなければ、もっと制作でバチバチする瞬間が出てきたかもしれない。
VaVa:流行も全然気にしてないもんね。
JUBEE:そうそう。各々ソロがしっかり確立してるからこそ、CDSは成立してるんじゃないかな。
みんなの話を聞いて、自分の考えが変わった
――僕はin-dさんの「意見言う前してる緊張」(『Go Ahead』)というリリックに驚きました。クルーの仲間とはいえ、よくこんな自分を曝け出したリリックを歌えたな、と。
in-d:ありがとうございます。このラインは自分でも気に入ってるのですごく嬉しいです。
BIM:『Go Ahead』はみんなで山形に行って帰ってきた二日後に作ったんです。
――山形で何かあったんですか?
BIM:「何かあった」というほどのことでもなく、俺の親父の実家にみんなで遊びに行って、夜普通に飲んでたんです。
VaVa:でもたま〜に深い話になったりするじゃないですか(笑)。
in-d:そうそう。各々のルーツや悩みを話す流れになったんですよ。その時、俺はみんなの話を聞いて、自分の考えが変わったんです。自分にとってメモリアルな日でした。そしたらBIMがその日のことをヴァースで書いてきたので、自分もとことん内面に向き合ったリリックを書いてみたんです。
VaVa:あの日はみんな内面に向き合うモードだった。
BIM:JUBEEなんか寝てたもんね(笑)。
JUBEE:あ、そうだ(笑)。
VaVa:それに関しては俺が悪い。ジュベちゃんが席を離れたタイミングで、席を奪っちゃったんです。戻ってきたジュベちゃんは席がなくて寝ちゃったっていう(笑)。あの時はごめんね。
JUBEE:途中からは(みんなの話を)聞いてたよ(笑)。
BIM:寝てたやつが1ヴァース目(笑)。
――仮想インタビューの切り出しから始まる『Retire』からの流れはかなり熱いです。
BIM:あれ仮想じゃなくて、本当のインタビュー映像やMCからVaVaくんが拾って繋ぎ合わせてるんです。
VaVa:そうそう。俺のはボイスメモ。5〜6年前に増田さんと死ぬほど真面目な話をしてた時のが残ってて俺っぽいとこを使いました。
JUBEE:この曲は「Wisteria」に入らない可能性もあったんだよね。ほんと入れて良かった。
in-d:良いって言ってくれる人がすごく多いもんね。
in-d
みんなが爆笑するかが自分の合格基準
――『Retire』や『Go Ahead』のようなシリアスなリリックと同時に、BIMさんやVaVaさんのフロウの多彩さにも本当に驚かされました。
BIM:『Retire』とか『Go Ahead』、『Wisteria』以外は、ずっとみんなを笑かす感じでした。
VaVa:アルバムを聴き直して「(リリックの)意味ない曲だなあ」って思うやつは、振り返ると大体レコーディングでBIMヴァースに爆笑させられてますね(笑)。
BIM:笑ってくれたら(自分的に)合格って基準にしてたかもしれないです。惜しかったのが『Boomerang』のサビ。増田さんからNGが出て作り直したんですけど、録り直し前のバージョンはレコーディングで今回一番の爆笑をかっさらったんです。自分でも気に入ってたから、この前のライブで間違えて思わず前のバージョンをちょっと歌っちゃった(笑)。
――それは内容が面白い? それとも言い方?
BIM:どっちもです(笑)。いろんな角度試してみました。
JUBEE:すごかったですよ。歌詞の意味もわかんないし。
BIM:JUBEEがこんな歌詞の書き方があるんだって言ってくれたのはすごく嬉しかった。
JUBEE:今回みんなと一緒に制作して自分の世界観が広がりました。「それありなんだ」「こういうのやっていいんだ」みたいなことが本当にたくさんあったんですよ。びっくりしたっすね。そういう意味でも一緒に作って良いアルバムでしたね。
in-d:わかる。録ったラップを聴かせてもらう時って、まず最初に歌詞が送られてくるんですね。それこそ「あながち」のBIMヴァースとか意味わかんないじゃないですか。俺らも「これをどう乗せるんだ?」って思うんです。で、聴くとすごいラップになってて。あと、一応どの曲もざっくりとテーマを共有してからリリックを書き始めるんですけど、BIMやVaVaちゃんのラップを聴いた後に自分のリリックを見ると、真面目すぎて逆にキモいっていう(笑)。
一同:(爆笑)
BIM:真面目にテーマに沿ってくれる人がいるから、俺がずらしても許されるのかなってところはあるよ。
VaVa:この前のライブでBIMが『あながち』の「襖の影 モーガンフリーマン」のラインを歌ってた時、普通に「この人何言ってんだろ?」って思いましたもん(笑)。
JUBEE:僕は「産毛が大事 ねぇご婦人ねぇご婦人」だな。ほんとに何言ってんのって思った(笑)。
BIM:JUBEEは最初「ねぇご婦人」じゃなくて「猫婦人」だと思ったんだよね(笑)。
VaVa:そういう意味では、今回のアルバムはインちゃんがテーマに対して忠実で、ジュベちゃんも忠実だけど遊び心がちょいちょい入ってて、自分とBIMはわけわかんない感じになってると思います。
VaVa
LINEのグループトーク内でいろんなビートが飛び交ってる
――『Boomerang』『Retire』のトラックはJUBEEさんとVaVaさんの共作ですね。
VaVa:6〜7割をジュベちゃんが作ってくれたので、自分は仕上げを手伝った感じですね。
JUBEE:『Boomerang』はなんか足りない気がしてVaVaちゃんに託しました。
VaVa:全体を調整して、ベースを追加したくらいかな。
――『180』はVaVaさんビートですが、よくよく聴くとドラムがかなり複雑ですよね。
VaVa:『180』はもともとソロ用に作ったビートです。メンフィスフォンクが好きだから、自分でもやってみたかったんです。増田さんも「いいね」と言ってくれたけど、乗せるラップのイメージが全然湧かなくてずっと放置してました。ある時「このビートCDSでやったら面白いかも」と思ってみんなに提案してみました。このビートは“味”重視。音質が悪くてもいいかなって。アメリカのヒップホップって雑なとことか、音の悪さも全部“味”にしちゃうじゃないですか。日本はどんどん音を綺麗にする方向にいってるけど、それだけじゃないだろって思って。ザラついてダーティな音がかっこいいヒップホップもたくさんあるから、そういうイメージで作りました。
――『Taste Test』について伺いたいんですが、いまのトレンド感だとVaVaさんのサビで曲が終わっても成立すると思うんです。なぜ最後に3人のヴァースを追加したんですか?
BIM:最初はVaVaくんの「C.D.S.が住所」と次のin-dの「Eany, meeny, miny, moe」は繋がってたんです。それを(プロデューサーのDJ )MAYAKUさんが切り離して、あの展開を作ってくれたんです。
――そうなんですね! すごく良い効果を生んでると思います。あとは『あながち』も最高のビートですね。
BIM:あ、じゃあこれから楽しみにしてもらっていいかもしれないです。実はdooooくんビートでラップしてる曲がまだ3曲くらいあるんですよ。
――今回のアルバムではどのようにトラックを選んでいったんですか?
BIM:アルバムの曲数とかは意識せず、良いビートあったらラップするみたいな感じでした。
VaVa:その期間はLINEのグループトーク内でいろんなビートが飛び交ってるんです。自分はもちろん、dooooくんも、ジュベちゃんも作ったのをどんどん送ってくるし、増田さんや錬くんからの提案もたくさんあって。そこから良いと思ったのをどんどん録っていくスタイルでやってました。
BIM:『あながち』で覚えてることと言うと、増田さんがJUBEEのラップを「(サイプレス・ヒルの)B-Realっぽいな」って褒めてたのが印象に残ってる。
JUBEE:『Yo, My Ladies』じゃなくて?
BIM:たぶん俺らはスタジオの外にいたからB-Realっぽく聴こえたんだと思う。ちょっと甲高い声っていうか。
JUBEE:僕は高い声も、低い声も出るからね。がなりもできるし。そういう意味では今回はみんなのを聴いてから合わせるようにラップしてます。『あながち』は無意識だったけど、『Yo, My Ladies』は意図的に緩くラップしました。
JUBEE
「Wisteria」を通じて、さらにみんなと仲良くなれた
――ヒップホップというととかく不良的な面、暴力的な面、競争的な面に注目が集まりますが、CDSの「Wisteria」にはヒップホップの楽しさが詰め込まれていて、それはアメリカとはまったく違う文化圏である日本でヒップホップをやる明確な動機になり得ると感じました。
VaVa:今回のアルバムはほとんど苦悩しなかったですからね(笑)。録り直ししたヴァースもほとんどないです。
BIM:そうね。唯一の苦悩といえば、増田さんと錬くんに「OK」って言われるかどうかってとこだけ。でも実際はほとんどNGが出なかった。だからどんどんできるんです。フロウも1日10個くらい作れたし。
――ちなみにボツになってしまった15曲はどんな感じで作ってたんですか?
VaVa:めっちゃワクワクしてました。で、増田さんと錬くんに聴いてもらった後、すべてが苦悩に変わりました(笑)。
in-d:そういう意味ではあの日が唯一最大の苦悩だったかも(笑)。
VaVa:あ、やる気スイッチを入れるのが大変だった。俺らもう30なんで、さすがにみんなで昼間に集まることってそうそうないんですね。レコーディングの最初のほうはちゃんとスケジュール通り動いてどんどん曲ができてきたけど、途中からみんなで集まること自体が楽しくなってきちゃって、結構みんなで遊びに行っちゃうことも多かったんです(笑)。それがなければもっとアルバムを早く出せてた。でも「Wisteria」を通じて、さらにみんなと仲良くなれた。それがアルバムに出ちゃってるんだと思います。
――良い話。リリックの細かい部分について質問したいんですが、『Hi』のBIMさんのヴァース「今はWinston 元はキャスター/見た目キャスパー 言われました」はどういう意味ですか?
BIM:リリック自体に意味はなくて(笑)。タバコの銘柄です。昔吸ってたのがウィンストンって紙タバコで、今はキャスターマイルドっていう。アルバム全体で言えることなんですが、俺は今までやったことない突飛なアイデアを試したみたかったんです。『Hi』はずっと(同じ調子で)踏んでるのが面白いかなと思ったんです。でも途中で飽きて、最後の4小節は「なわけねーし/意味なし歌詞/ガチにマスタベshit」って変えたんです。これは秒殺でできたラインです。さすがに10年ラップやってるんで、自分の中で培われてきたものがあって。適当にやってるわけじゃないんです。でも「よーいドン」で16小節書きなさいって言われたら1分で書ける。
――だから今作のBIMさんのヴァースの多彩さなんですね。意味ないリリックをここまでラップで聞かせるスキルはとてつもないと思いました。
BIM:ビートを聴いて「こういうアプローチにしよう」っていうのが出たら早いっす。逆に今回は面白いアイデアが思いつかなかった時に時間がかかったかも。
――それはVaVaさんの「でもやばくねーとこやべぇとこにすんの俺らの仕事」(『Hi』)というラインに通じますね。
BIM:偉そうなリリックですね(笑)。
VaVa:はい。非常に偉そうです(笑)。ただまあラッパーですから。あのラインには地元をレペゼンする気持ちが込められてるんです。俺の地元は本当に平和で、ヒップホップ的なヤバさは何もない。でもこうしてリリックにすることでヤバくできるかなって。別に「井荻が自分の縄張りだ」って意味じゃないです。そういうキャラじゃないですから。今回のアルバムは溝の口エリアで制作されてて、リリックでも結構言ってるから、ファンの人が溝の口に行ってくれたりもしてるんですよ。
――確かに井荻も溝の口もいわゆる“ヒップホップな街”ではないですもんね。でもそこをいかにヤバい場所に思わせるかっていうのはすごくヒップホップだと思います。
BIM:誰かを攻撃する意図じゃない、そういうボースティングをどんどんしていこうっていうのはありました。例えばVaVaくんだったらヒップホップで人生を変えようとしてる。それってめっちゃヒップホップだと思うんです。ヒップホップにはいろんなヒップホップがあるじゃないですか。なんでもいいのがヒップホップだと思う。俺はいろんなヒップホップが好き。VaVaくんみたいに井荻をヤバく表現するボースティングはすごいヒップホップだと思う。
VaVa:(1stソロアルバム)「VVorld」を出してすぐくらいの頃、BIMが俺に言ってくれたよね。「自分の弱いことさらけ出して金稼いでもお前が1番やべえよ」みたいな。
BIM:一番強えと思う。だってもうどんなに弱いとこを見られてもオッケーなわけじゃん。俺がコメディアンに憧れるのも同じ理由なんですよね。ダサいことがかっこよかったり、コケることが成功だったりする。そういう人生のほうが絶対強い。俺はそう思います。
BIM
この関係性は本当に大事にしたほうがいいと思ってる
――そういう意味だとJUBEEさんの「誰よりも声出なくてみんなとの差眺めて」(『Go Ahead』)というラインもグッときました。
JUBEE:そのラインにはめちゃ気持ちこもってますね。たぶん今は一番声出てると思う。その自信はあります。バンドもやってますし。でもあの頃は増田さんにマイクの持ち方まで教わってたんです。「ジュベちゃん、マイクはこう持つんやで」って。
BIM:自分の好きなラインを挙げてくの良いね(笑)。
――さっき話題になったin-dさんの『Go Ahead』のラインもそうですけど、ここまで腹割って話せる関係値って当たり前じゃないと思うんですよ。それを作品として成立させたことが本当にすごい。
in-d:俺は『Go Ahead』で「そりゃ簡単じゃねぇよ本当」とか「正直向き合うのは大変」って歌ってますけど、自分にとってBIMはキーマンだったんです。本人を前にして言うのもあれだけど、VaVaちゃんやJUBEEと2人で遊ぶことはあってもBIMとはちょっと距離があった。勝手に俺が壁を作ってた。2人で話す機会も少なかったし。でも2〜3年前ぐらいに初めて差し飲みして。そこから距離が徐々に縮まったんですよね。さっき言ったように俺の考え方も変わってきたし、もっとこうしたほうがいいなって思い直したり。
BIM:山形で飲んだ時も言ったんですけど、俺らみたいなこの関係性は本当に大事にしたほうがいいと思ってるんです。これからもこうやってみんなで音楽を作ったり、遊んだりしていきたいんです。
VaVa:うん。俺はずっとソロでやってたから、自分の人生観が自分の正解だと思ってたんだけど、今回みんなと制作したり、一緒に海外でMVを撮りに行ったりする中で、自分がめっちゃ変なやつなんだってことがわかりました。
BIM:VaVaくんのその感じはまだみんなに知られてないもんね。マジでびっくりすることばっかです。
VaVa:それこそインちゃんと一緒でそのギャップを簡単に受け入れられなかったんです。いじられたり、注意されたりすると怒っちゃうみたいな。でもCDSでみんなと一緒にいて、自分に対する見方が変わった。そこはかなりデカい。大人だけど勉強させてもらった。
BIM:セカンドアルバムではVaVaくんをもっと解剖しなきゃね(笑)。
――ということはCDSとして今後も活動していく予定はある?
BIM:続けていくつもりです。
JUBEE:6人でやりたいこといっぱいあるもんね。
in-d:次のアルバムでもインタビューしてください(笑)。
CreativeDrugStore
2012年発足。ラッパーのBIM, in-d, VaVa, JUBEEとdoooo(DJ), Heiyuu(video director)からなるクルーで、個々でも数々の作品をリリースしており、ジャンルを問わず幅広い世代から支持を集める。結成10周年の2022年にグループとしての音楽活動が本格化。着実に、マイペースに力をつけてきたメンバーの力が結集したステージングは自然体で、各々が志向する音楽が混ざり合って放たれる。そして、2023年12月に待望の1st Album「Wisteria」を発表した。
CreativeDrugStore「Wisteria」
2023年12月13日 配信リリース
https://summit.lnk.to/SMMT225
1. Ceremony
2. Taste Test
3. Hi
4. 6ix Pack
5. Yo, My Ladies
6. 180
7. Boomerang
8. JENGA
9. Nah
10. あながち
11. Menthol
12. Retire
13. Go Ahead
14. Wisteria
宮崎敬太
1977年生まれ、神奈川県出身。音楽ライター。オルタナティブなダンスミュージック、映画、マンガ、アニメ、ドラマ、動物が好き。WEB媒体での執筆活動の他、D.O自伝「悪党の詩」、輪入道自伝「俺はやる」(ともに彩図社)の構成なども担当。
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