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Frasco タカノシンヤ インタビュー ~仕事も音楽も自分のやりたいことを(前編)

音楽ユニットFrascoのタカノシンヤさんは会社員として働きながら音楽活動を続けている。
「音楽だけでは食べていけないから働く」という考え方ではなく、「会社員だからできること」を積極的に見いだしているタカノさん。
現在の活動スタイルに辿り着くまでの軌跡、作詞・作曲法、音楽家と広告クリエイターの共存共栄の仕方など、余すところなく伺いました。

プロフィール)
タカノシンヤ

作詞家・作曲家
2015年に峰らる(Vo.)と音楽ユニットFrascoを結成。2018年には5ヶ月間で10曲のシングル作品を連続リリースし、シングルで作るアルバム仕様のプレイリスト=Sinbum(シンバム)『REM』として完結させるプロジェクトを敢行。

2021年にはSKYTOPIAとともにFrasco×SKYTOPIA名義で初アルバム『UNNATURAL』をリリース。

最近では、渡辺直美やKERENMI(蔦谷好位置)、レイン・パターソン(にじさんじ)への楽曲提供(作詞)も行っている。

タカノさんの経歴を教えてください。

経歴だけで5時間くらい話せるので、とりあえずガーっとお話ししますね。

新卒で教員になり、6年くらい特別支援学校で理科教員をしていました。
Frascoというユニット名も、実はそこからだったりします。

10年間付き合っていた彼女と教員時代に結婚したのですが、1年後に「好きな人が出来た」と言われたのでフリーになりまして。
それまでずっと「他人のために頑張る」という人生だったけど、これからは自分のやりたいことをやる人生にしようと決意したんです。

やりたかったけど出来なかったことって何だろうと考えたら、海外に興味があったなと。
あらためて英語を勉強して、カナダに1年、オーストラリアに1年という予定でワーキングホリデーに行きました。

カナダで知り合ったメキシコ人と付き合うことになり、オーストラリアに移ってからはメキシコとオーストラリアの超遠距離恋愛になったのですが、「寂しいからメキシコに来て」と言われてメキシコに行ったんです。
彼女はメキシコでホテルを経営するようなお金持ちで、1年ほどメキシコでヒモ生活を送りましたが、破局して2015年に日本に帰ってきました。

帰国後は知り合いの紹介で外資系のキャリアコンサルタントのような仕事に就きました。IT企業の役員に声をかけて転職のコーディネートをするというお仕事で、そこでコミュニケーション力やビジネススキルが身に付きましたね。

そのころ、知り合いに誘われて参加した飲み会で峰さんと出会います。

 

ついにFrascoの相方である峰らるさんのご登場ですね。

ぼく、その飲み会に民族楽器を持ち込んで演奏してたんですよ。
そしたら、峰さんが「リズム感めっちゃええやん!バンドやろうぜ」「1曲作ってよ!」と言ってくれたんです。

最初は戸惑っていました。学生時代にバンドでベースを担当してたので、音楽経験はあるものの、自分で曲を作ったことはなかったので、さぁ、どうしようと。
そしたら峰さんが、自分で作ったアニメーションを見せてくれて、それが本当にすごくて、このひとすごく才能があるから一緒にやりたい!となりました。
峰さんはそのアニメーションの音楽をGarageBandで作っていたので、GarageBandの使い方も峰さんに教えてもらいました。

 

そこから音楽制作を始められたんですね。

コード進行とかはYouTubeで勉強して。
あとGarageBandにはスマートコードという機能もあって、それを使うと結構できるんです。それがすっごく楽しかった。通勤中と昼休みを利用して毎日2.5時間〜3時間、ひたすら曲を作りましたね。

しかも、最初に作った曲でJ-WAVE「RADIO SAKAMOTO」のデモテープオーディションに応募したら、優秀作品に選ばれたんです。それで自信もついて、本格的にやって行こうという流れができました。
それからずっと、サラリーマンやりながら空いた時間で曲を作るというスタイルを続けています。

 

GarageBandはタブレットで操作していたのでしょうか?

タブレットではなくスマホです。
スマホでいつでもどこでも気軽に音楽が作れる、と言うのが、自分に向いてましたね。
ときには、信号の待ち時間で打ち込んだり。

実力がつき始めてからは、MacBookを買ってLogicというDAWソフトに移行していますが、リリースした曲の中にはGarageBandだけで作った曲もたくさんあるし、いまだにサポートツールとしてスマホのGarageBandは使っています。
GarageBandはLogicに同期もできますし、作りかけの曲がいっぱいあって、作曲していて行き詰った時に見返したり。ネタ帳みたいに使ってます。

デジタルツールを使いこなし、コード進行とかロジカルなところをどんどん習得できる、という部分では、理科教員、理系だったということが活きているのでしょうか。

理科教員といっても、自分はそんなに理系って感じではないですね。
状態変化の実験ってことで、アイスクリームばかり作ってましたから。

音楽を作りたい!って気持ちが強ければ誰でもできると思います。
今はYouTubeとかでハウツー動画もいっぱいありますし、本当に気持ち次第だと思います。
学生時代にバンドはやってましたけど、当時は作曲するなんてハードルが高いと感じていました。
それが、ちょうど峰さんと出会った頃は、デバイスがどんどん発達して、技術や知識のなさをツールが補ってくれて。最初の1曲目も、GarageBandがなかったら間違いなくできなかったです。

 

最近は作詞の仕事も多い印象です。特にFrascoの歌詞には言葉の選び方とはめ方に独特のセンスと気持ちよさがあります。歌詞を書くことはツールや技術では補えないですよね。

やっぱり、理系じゃないのかもしれないですね。
宮沢賢治や村上春樹さんが大好きで、小説から影響を受けることも多いです。
音楽家で言うと、かせきさいだぁさん。純文学からサンプリングしたような文学的な歌詞を書かれるんですよね。その表現が面白いと思う。例えば『悲しみの観察日記』という大好きな曲があって、歌詞の一節に「建ぺい率が下がってく」というのがあるんです。
想像つかなくないですか? どういう状況?って。想像力を掻き立てられますよね。
現実世界では起きないようなシチュエーションを描くというか。10代でこういう世界観に触れていたことは、大きいと思います。

あと、Frascoはマジックリアリズムというのをコンセプトにしています。
これは、南米文学からの影響。非現実を現実的に描写するという表現手法で、例えば、有名なガルシア=マルケス『百年の孤独』に「嬉しさのあまり天高く飛び立ち、そのまま羽が生え天使のようにどこかへ行ってしまった。」という描写があります。
こんな風に、非日常が日常的に描かれているのは面白いなと。
常に意識しているのは、パラレルワールドの日常生活の出来事を描写するという書き方です。

 

KERENMI『ふぞろい』の歌詞を蔦谷好位置さんとともに担当されていますが、こちらはFrascoとは全く違う世界観ですね。

Frascoとか個人での仕事は、作家性を色濃く出せる場なので、割と自由にやっていますが、作詞家として依頼いただくものには、お題に対してかっちり打ち返すことを意識しています。

『ふぞろい』に関しても、蔦谷さんとLINEで1分置きくらいにやりとりして、ごりごり詰めていきました。
蔦谷さんがインタビューで「自分で書けよ、と思われてたかもしれない」とネタっぽくおっしゃてましたけど、まぁ、それくらいやりとりしましたね(笑)。

作詞家として意識しているのは、ストーリーはちゃんと成立していることは大前提で、歌った時に韻がちゃんと踏まれていて、イントネーションもちゃんとハマっている、全体をパズルのようにカチッと成立させるということです。難しくもあり、やりがいもあります。

 

Frascoでは、峰さんがキレるんじゃないかってくらい、歌いづらそうな歌詞もありますよね。

そうなんですよ。
Frascoはあえて普通の作詞メソッドから外れるような、チャレンジングなことを結構やってます。
言いにくい言葉を連呼させるとかもその一つですね。峰さんは、早口言葉っぽくて楽しい、と受け入れてくれます。普通の人だったら怒ってますよね。いい相方でほんとに感謝です。

後編 につづく

後編では会社員として働きながら音楽活動に取り組むタカノさんの考え方に迫ります。

 

TEXT:KENDRIX Media 編集部

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