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芸団協 CPRA に突撃取材(調査員:Fionn Mily)(前編)

若手クリエイターが突撃取材!クリエイターリサーチ
芸団協 CPRA に突撃取材(調査員:Fionn Mily)(前編)

ナレッジ

「全ての音楽クリエイターをCreation Ecosystemに」とか言ってるけど、要するに「音楽業界」ってことでしょ。

音楽業界ってさ、大人たちの思惑が複雑に絡み合っていて、若い才能を喰いものにしようとしているだけなんじゃないの?

とにかく分かりにくいし、怖くて近寄りがたいんだよ。

そんな疑念を解消すべく、若き音楽クリエイターが調査員となり、音楽業界を影で支える企業・団体・キーパーソンに突撃取材を敢行するのが、この「クリエイターリサーチ」。

第一回の調査員は、現役大学生でラッパー・シンガーのFionn Milyさん。
Fionn Milyさんは、自ら作詞・作曲だけでなくMVの制作まで行っている。

(プロフィール)

Fionn Mily

2000年生まれ、神奈川県出身。
ラッパー/シンガーソングライター。

2020年1月に1st EP『Princess』をリリース。
2020年春にはレッドブルが主催するオンラインマイクリレーコンテスト「Red Bull Our Bars」で350以上の応募の中から優勝を勝ち取った。

HIP HOPの枠に収まらない多彩な表現力と透明感のある歌声を武器とする新進気鋭のアーティスト。

そんな彼が今回取材を試みたのは、
「公益社団法人日本芸能実演家団体協議会 実演家著作隣接権センター」
通称「芸団協CPRA(ゲイダンキョウ・クプラ)」。

芸団協CPRAは一体どのように音楽業界を影から支えているのか。
前後編の2回に分けて、取材の様子をお届けします。

いざ、芸能花伝舎へ

2022年2月某日、調査員のFionn Milyは、取材場所として指定された、新宿区にある「芸能花伝舎」という施設を訪ねた。

芸能花伝舎

公益社団法人日本芸能実演家団体協議会(芸団協)が運営する、演劇、音楽、舞踊、演芸などさまざまな実演芸術の関係者が集い、交流する文化拠点。
芸団協と新宿区が協定を結び、少子化によって閉校となった旧新宿区立淀橋第三小学校を活用している。教室や体育館を改修した11の「創造スペース」は、稽古、ワークショップ、研修、会議、撮影、イベントなど、幅広い用途に対応できる。
公式HP:https://www.geidankyo.or.jp/12kaden/

 

芸能花伝舎は小学校の跡地を活用しているため、入口は校門そのものだった。
その校門で出迎えてくれたのは、芸団協の常務理事である松武秀樹さん!
アーティストの大先輩と対面して思わず緊張するFionnさん(突撃の意気込みはどこに?!)。

写真左:Fionn Milyさん 写真右:松武秀樹さん

(プロフィール)

松武秀樹

1951年生まれ、神奈川県出身。
シンセサイザー・プログラマー/作編曲家/プロデューサー。

1971年に冨田勲氏のアシスタントとして、モーグ・シンセサイザーでの音楽制作を経験。

1978年〜1982年にかけてYMOの作品に参加、ワールド・ツアーを含めたライブにも帯同。

1981年には自身のユニットであるLogic Systemでの活動をスタートさせ、数多くのアルバムをリリース。

公益社団法人日本芸能実演家団体協議会(芸団協)常務理事、実演家著作隣接権センター運営委員。

取材場所としてご提供いただいたのは、芸能花伝舎の「創造スペース」の中でも、特に「教室」っぽさが色濃く残された場所。

現役大学生のFionnさんでも、どこか懐かしさを感じる雰囲気のおかげで少し緊張が和らいだところで(ほら、笑ってる)、芸団協CPRAの職員の方々も加わり、ついに取材開始!

芸団協は、実演家による実演家のための団体

Fionn Mily(Fionn) 早速ですが芸団協とはどういう団体ですか?

CPRA 「公益社団法人 日本芸能実演家団体協議会」というのが正式名称です。
芸団協は演劇・邦楽・洋楽・舞踊・演芸・その他様々なジャンルの芸能に関する団体によって構成されています。

正・賛助会員団体⼀覧:https://geidankyo.or.jp/about/disclosure/group.html

団体のなかには舞台スタッフの団体などもありますが、基本的には「実演家」の団体によって構成されている、ということが一番大きな特徴です。

芸団協の事業は3つの柱で成り立っています。

1 実演家の権利を守る
放送局やレンタル事業者が、音楽CD等に収録されている歌唱や演奏を利用する際などの権利処理と使用料等の徴収・分配を行う。【実演家著作隣接権センター(CPRA)事業】

2 芸能花伝舎の運営やイベントの企画・運営
実演家が活動しやすい場・活動していく場を作り、一般の人に芸術鑑賞の機会を提供する。【実演芸術振興事業】

3 調査研究や政策提言
実演家の権利を拡充し、実演芸術を取り巻く環境を整える。
実演家の現場の声を聴き、調査研究を重ね、国や自治体への政策提言を行う。【調査研究・政策提言事業】

※出典:https://geidankyo.or.jp/about/

CPRA 松武さんは芸団協の常務理事であり、CPRAの運営委員でもあります。
そして我々は芸団協のなかでも、CPRAとして「実演家の権利を守る」業務に携わっています。

実演家とは ~「初音ミク」も実演家?~

CPRA 先ほどから何度も当たり前のように「実演家」と言っていますが、Fionnさんは「実演家」と言われると、どんなイメージを抱きますか?

Fionn うーん、「舞台に立つ人」、、、ですかね。

CPRA 「実演」という言葉って、日常生活では「実演販売」くらいでしか登場しないのでは、と我々でも感じているので、なかなかイメージしづらいかなと思っていましたが、、、
Fionnさんの認識は、、、正解です!

著作権法では実演のことを「著作物を、演劇的に演じ、舞い、演奏し、歌い、口演し、朗詠し、又はその他の方法により演ずること」や「著作物以外のものを演じる場合で芸能的な性質を有するもの」と定義しています。

ですので、「実演家」とは、このような実演を行った人のことをいいます。プロアマは問いません。
例えば、脚本を演じる俳優さんや曲を歌う歌手などは実演家ですね。
実演家の権利は、実演を行った時点で発生します。

松武 私は著作物を創作的に演じているかどうか、が重要だと思います。
さきほどの実演の定義に「その他の方法」があるように、実演というのは非常に多岐にわたる概念です。私が芸団協に入ろうとしたときには、『きみが演奏するシンセサイザーは「打ち込み」だから「その他の方法」だな』と言われました。

CPRA 松武さんが代表理事を務められていた団体(現:一般社団法人日本シンセサイザープロフェッショナルアーツ)が芸団協に加入されて、打ち込みで演奏する方も実演家と認められたことは、「初音ミク」等に歌唱させる「ボカロP」が、実演家と認められることにつながっています。

松武 音楽の譜面だけあっても、譜面が読めない人にはどんな曲だか分からない。
それを演奏する人や歌う人がいることで、素晴らしい曲なんだっていうことが分かる。
それぞれ役割が異なるから、作詞・作曲は著作権、実演は著作隣接権として、どちらも権利が認められています。

実演家の権利とは

Fionn 実演家はどんな権利を持っているのですか?

CPRA 実演家の権利には「実演家人格権」と「財産権」があります。

実演家人格権
実演家の『心が傷つけられないこと』を守る権利です。
「作品に名前を入れてもらいたい」「勝手に変えないで欲しい」など異議を申し立てることができます。
条件はつきますが、実演家の人格的利益が保護されています。

財産権

・許諾権
勝手に〇〇されない権利、と理解してください。
録音・録画権、送信可能化権等があります。
例えば、Fionnさんが路上ライブをした際に「勝手に撮影するのはやめてください」あるいは「自分たちで楽しむだけならOK」といった条件を付けて、コントロールできるのが許諾権です。

・報酬請求権
報酬請求権は、許諾権と違い、利用をコントロールすることができません。
『使っても良いけどお金を払ってください』という権利です。
著作者には許諾権が多いのに対して、実演家には報酬請求権が多いです。

例えば、歌手、演奏家など、一つの楽曲には多くの実演家が参加していますよね。
全員に許諾権を与えた場合、一人でもNGが出ると使うことができなくなってしまいます。
利用のしやすさと権利者保護のバランスをとるため、実演家は報酬請求権が多いということになっています。

Fionn ライブの様子を撮影してSNSに投稿してもらうことは当たり前になっていますが、嫌な場合は、アーティストが止めることもできるんですね。

CPRA そうですね。止めさせるだけでなく「無料でいいですよ」や「この条件ならOKですよ」とすることもできます。利用をコントロールできる権利と思ってください。

Fionn たまに、ライブを体験することよりも、写真や動画を撮ることに必死な人もいますが、自分が観客の時は、撮らない派です。目で観て記憶に焼き付けます。

CPRA 録画NGとして演出に集中させるなど、ルールを決めることでパフォーマンスの楽しませかたを絞れますよね。戦略的にルールを決めることもできますよ。

著作権と著作隣接権、管理する団体も違う

CPRA  Fionnさんは著作権管理団体には加入しているんですよね。
どういうきっかけで加入されたんですか。

Fionn テレビ番組に出演した時にテレビ局の方が教えてくれました。
放送局は、出演料とは別に楽曲の使用料を払わなければいけないんだけど、放送局が個人に直接支払うことは難しい。著作権管理団体に加入している人の分は、そこにまとめて支払っているから、そういう団体に加入することをオススメするよって。
それでJASRACのことを知って、頑張って問い合わせてみたことが始まりです。

CPRA Fionnさんはご自身で詞と曲を作られているので、JASRACには作詞家・作曲家としての権利を預けていることになります。
それとは別にご自身で歌われているので、歌手、すなわち実演家でもあります。実演家としての権利については、CPRAの担当となります。
音楽であればさらにもう一つ。レコード会社のように音を固定して音源を作った法人などが、レコード製作者の権利を持っています。
作詞家・作曲家の権利が著作権、実演家とレコード製作者の権利が著作隣接権ですね。

松武 さっきから難しい言葉ばかり出てくるよね(笑)。

Fionn 契約書とかも漢字ばかり並んでいて、怖くてなかなかサインできないです。
これにサインしたら痛い目みるんじゃないかとか考えちゃいます、、、

CPRA よく分からないけど、とりあえずサインしてしまって、とんでもないことになったという方から、相談を受けることもあります。
ですので、契約書を理解してからサインしよう、と思う姿勢はすごく大切だと思います。

松武 契約書だけは分からなくても最後まで読まなきゃいけませんよ。どこに落とし穴があるか分からないので。
私も最初の頃はよく読んで、分からないことはレコード会社に相談していました。
契約書は要求する側にとって都合の良いように作られていることがあるから「それは困るよ」っていうことはちゃんと伝えていました。

CPRA 今まで見ていただいたように法律や権利は「難しい」です。
そもそもアーティストの方は法律を勉強するために活動しているわけじゃないですよね。
我々も分かりやすく発信することを心がけています。
実演家の団体ですから、少しでもアーティストの皆さんのお役に立てれば良いなと考えています。

後編 へつづく。

TEXT:KENDRIX Media 編集部

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