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「必要に迫られてやってみたらすごく面白かった」KM&Lil‘ Leise But Goldが描く自分らしいヒップホップの表現方法

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「1of1」とは世界にひとつしかないもの/ことを指す言葉です。この連載は日本で「1of1」な活動をしているアーティストたちにフォーカスして、活動の軸になっている信念、制作へのこだわり、ライフスタイルなどさまざまなテーマを深掘りしていきます。

今回のゲストはKMさんとLil‘ Leise But Goldさん。二人は、2026年にKMさんのボーカルプロジェクト・BERLINETTA BOY NEEDS TOO MUCH MONEYのアルバム「Post Poet」のリリースに合わせて、プロダクション・REVERSE CASTLE CITYのロゴも発表しました。インタビューでは、REVERSE CASTLE CITYのあれこれから、待望のアルバム「Post Poet」のディテールなど、さまざまなテーマで話してもらいました。

文:宮崎敬太 写真:雨宮透貴

REVERSE CASTLE CITYの由来と会社のコンセプト

――KMさんのボーカルプロジェクト・BERLINETTA BOY NEEDS TOO MUCH MONEYのアルバム「Post Poet」のリリースに合わせて、KMさんとLil‘ Leise But Goldさんの会社・REVERSE CASTLE CITYのロゴも発表しました。

KM:正直、自分たちが会社を立ち上げて、しかも奥さんが社長になるなんて想像もしていませんでした(笑)。

Lil’ Leise But Gold:きっかけは、Mary Joy Recordingsの肥後さんに勧めてもらったことです。私たちは個人事業主として右も左もわからない頃からMary Joy Recordingsにお世話になっています。7年目を迎えるタイミングで「そろそろお二人の活動を会社化してもいいんじゃないですか?」と提案していただきました。

――会社化するとどんなメリットがあるのでしょうか?

Lil’ Leise But Gold:現実的な話としては、音楽以外の活動の幅が増すということはもちろん、社会的な信用度が高くなるということが一番のメリットですね。今も多々Mary Joyのサポートを受けて楽曲制作やライブをさせていただいているのですが、たとえば、こちら発信で誰かのプロデュースをする際やチームを大きくしたいと考えた際に、会社という別人格があったほうがいいと思いました。

KM:で、せっかく会社を作るなら、ちゃんとコンセプトを考えて、ファンの方たちにも愛される会社というか、ブランドになったらいいなと思って。ようやくお披露目できるレベルになったのがこのタイミングだった、という感じです。

――REVERSE CASTLE CITYの由来と、会社のコンセプトを教えてください。

KM:ロゴデザインにも通じるんですが、アンダーグラウンドにはものすごい文化とクリエイティブがある、ということですね。表層的に光って見えるものなんかよりも、ものすごい輝きを放っている、みたいな。

――KMさんが活動を通じて発信しているメッセージですよね。

KM:うん。あと会社を発表するタイミングに、それこそロゴにはじまり、今後リリースするTシャツやトート、キーホルダーみたいなアイテムのデザインも固めておきたかったんですよ。そこはめちゃくちゃこだわっていました。LAID BUGっていうチームと去年からずっとやりとりしていて、自分もアルバム制作があったから、2ヶ月くらい返信が途絶えてしまう、みたいなのが続いちゃって気づいたらワンマンが近づいてきてしまった、という。今日、サンプルを持ってきたんですよ。

 
 
 
 
 
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――え、めっちゃいいですね! 超かわいい。これは着たい(笑)。Tシャツにプリントされたメッセージはどういう意味なんですか?

KM:「Sober mind, Blurry Lines」。

Lil’ Leise But Gold:頭はシラフなんだけど目の前のライン(道路の白線)はブレているってニュアンス。パーティーの後、翌日の状態ですね(笑)。

――ボディもしっかりしていますね。

KM:そこはめっちゃこだわりました(笑)。

Lil’ Leise But Gold:ガシガシ洗濯して、いっぱい着てほしいです。一回洗濯したらクタクタになっちゃってもう着られないって、あるあるかもしれないけど悲しいじゃないですか(笑)。

KM:俺らとしてはこれをビジネスにする気はなくて。煽るつもりはないけど、生産数も結構少ない。ほかのアイテムも、ブックカバーとしおりのセットとか単純に自分が欲しいものだけ。しおりって結構すぐ無くしちゃうんですよ。でもちゃんとしたデザインで、品質もしっかりしていて、ある程度の金額もする。そういうものだったら大事に使いたくなるかもなって。

Lil’ Leise But Gold:やっぱり一番は、聴いてくれるお客さんや足を運んでくれるお客さんと一緒に楽しいことをしたいんですよね。今まで二人でぼんやりと考えていたけどどう表現して形にしていいかわからなかったアイデアが、会社をブランドとして捉えることで実現できそうと思って。といっても2年ほどかけて一個一個クリアして、ようやく発表する段階まで来たという感じです。

KM:俺は「社長になりたい」「ブランドを立ち上げたい」っていうタイプの人間じゃないんですよ。会社に関しては必要に迫られて立ち上げたし、ブランドも「せっかく屋号があるなら」というところから始まっていて。歌に関してもそう。伝えたいことがあるから今作で歌いました。そういう意味では、ちょっと周りとは温度感が違うかもしれない。

BERLINETTA BOY NEEDS TOO MUCH MONEYの人格

――KMさんがBERLINETTA BOY NEEDS TOO MUCH MONEYをスタートした理由をもう少し詳しく教えてください。

KM:プロデューサーとしてスキルにこだわればこだわるほど、どんどんわかりにくいものができるんですね。やたら長いけどよくわからない小説みたいな感じ。読破することに意味があるみたいな本ってあるじゃないですか(笑)。

――ハードコアな読み手に向けた感じ。

KM:そうそう。特にインストだと長編小説みたいな世界観になってしまいがちで、どうしてもリスナーの幅も狭くなるし、「分かる人だけ分かればいい」っていうのも今はちょっと違うかなと思って。

――閉じた方向性ではありますよね。それにKMさんは前回のインタビューで「どんなに良い仕事をしても“KM”の存在はそこまでフィーチャーされない」と発言されていました。

KM:前に出ないとスポットライトが当たらないんですよね。

――そこには、先ほどLil’ Leise But Goldさんが言われた「生活」というテーマにも繋がります。音楽を生業にするなら、人気とは向きあわなければならない。

KM:人気とかセールスっていう言葉は少しニュアンスが違うんですけども、いくら自分の作ったものが素晴らしくてそれを声高に叫んでも、シーンに認めてもらわないことには始まらないと思うんです。

――加えて、前作「Ftheworld」よりもKMさんのパーソナルなカラーが出ている気がしました。インスタのストーリーズで挙げているSF小説の世界観とか、普段クラブでお会いした時に話しているような内容が形になったというか。「Post Poet」を聴いて、KMさんの世界をより身近に感じることができました。

KM:アルバムに関しては、当初EPサイズの曲数の予定だったんですけども、去年の後半に『Urban Escape』と『Blue Hour (feat. SPARTA)』が出来て、今年に入って残りの曲を一気に仕上げていった感じです。

Lil’ Leise But Gold:でもリリックは進めていたんじゃない?

KM:そうっすね。しっかり書くというよりは、BERLINETTA BOY NEEDS TOO MUCH MONEYの人格を書きながら形作っていった。このキャラクターを一番端的に表しているのは「PrefuseとかAphex Twin 下北沢で円安ディグ」(『170』)ってとこ。彼はprefuse 73やAphex Twinが好きで、フェラーリで下北にレコードを買いに行っちゃうようなやつなんです。今、円安だからものすごくレコードが高いし、ガソリンも駐車料金も高いけど、そんなの全然気にしない。そういうキャラクター。


KM, BERLINETTA BOY NEEDS TOO MUCH MONEY – 170 (Official Lyric Video)

――ナードだけど、ヒップホップの至上命題であるメイクマネーの精神は体現している、みたいな?

KM:一般的なフレックスは時計とかメルセデスとかだけど、BERLINETTA BOY NEEDS TOO MUCH MONEYは余裕があってフレックスの方向もナードみたいな。そういうキャラクターでやりたかったんですよね。

――一般的には矛盾しているように思える要素がBERLINETTA BOY NEEDS TOO MUCH MONEYの中では成立していると。実際、そういう人もいるでしょうしね。

KM:だから「人種差別」「ジェンダー差別」についても考えるし、「信号が黄色になったらブレーキ踏もうよ。対向車が右折できないじゃん」みたいなちっちゃいことも言う。そういうのが交互に出てきたら面白いなっていうのを去年の段階で考えていました。

Lil’ Leise But Gold:KMはこういう感覚をこれまでインストのビートで伝えようとしていたんです。でもやればやるほど難解になってしまって、そこで苦悩しているところを目の当たりにしていたので、こうして言語化することで自分の世界がみんなに伝わっているのはすごく良かったなと思います。

――今作を聴いて『Dawn Chorus (feat. Campanella & ermhoi)』のアイデアがKMさんの中から出てきたこともより納得できました。

Lil’ Leise But Gold:ね。より具体的に彼の中がわかってもらえるというか。やっぱり誰しも投げ出されずに理解されたいものだし。

別人格を持つことで自由になれる

KM:『市川PA』のリリックの意味わかりましたか?

――KMさんが真夜中にフェラーリでドライブして、市川パーキングエリアで独り言を言っているのかな、と思いました。


KM, BERLINETTA BOY NEEDS TOO MUCH MONEY – 市川PA (Official Lyric Video)

KM:プラスアルファで、ミッドナイトというのは実在するストリートレーシングチームのことなんです。

――えっ!?

KM:1980年代に結成されて、日本のチューニングカルチャー黎明期から現在も活動が続くチームです。今年の初めにたまたま市川のパーキングエリアに行ったら、そのミッドナイトの人たちがいて。そこから、今のヒップホップシーンのことをいつも混んでいる首都高に準えて歌ったら面白いかな、ってアイデアが思いつきました。

Lil’ Leise But Gold:ダブルミーニングなんだぁ。

KM:いまのヒップホップシーンってみんなが我先にゴール地点に着こうとしていて。BERLINETTA BOY NEEDS TOO MUCH MONEYは「俺はそういうの嫌だな」と思っている。「追い越し車線が混んでる状況 / オレもうやらない他人との競争」。

――KMとして歌うと違うニュアンスが出てきてしまいますもんね。

KM:変なハレーションが起こりかねない。BERLINETTA BOY NEEDS TOO MUCH MONEYはシティボーイだから、ヒップホップのヤンキーノリとはまた違います。

Lil’ Leise But Gold:もうちょっとゆるい感じ。

――「ティファよりリノアがいいよ」というラインがよくわからなかったんです。

KM:ティファはファイナルファンタジーⅦのキャラで、リノアはⅧのヒロインっすね。一般社にはティファの方が人気があります!(笑)。

――なるほど!

KM:「宇宙の果てで聴きたいFaye wong」っていうのは、ファイナルファンタジーⅧのエンディングテーマのフェイ・ウォン『Eyes On Me』のこと。良い曲だと思うし、世代的にもFFは普通に好きでした。「デッドスター最高のエンド」はTHEE MICHELLE GUN ELEPHANT。

――架空のキャラだから、ナードな面も出せちゃう。

KM:そうなんですよ。それで夜中はフェラーリ乗ってますからね。自分でもすげえ面白いキャラだなと思って。

Lil’ Leise But Gold:別人格を持つことで自由になれるっていう。

KM:実はBERLINETTA BOY NEEDS TOO MUCH MONEYのInstagramアカウントも作ったんです。でも鍵をかけています。お金のためじゃないので、あまり広がって欲しくない。REVERSE CASTLE CITYのアイテムはワンマンで販売するけど、今後はそんなに告知しない。もちろん転売屋の問題が出てきたらまた考えるけど、できるだけマスにいかないようにブランディングしたい。KMやLil‘ Leise But Goldの動向を気にしてくれている人に対して適正価格で販売していきます。それくらい大事にしているんです。

Lil’ Leise But Gold:街で持っている人を見かけたら唐突な親戚感が湧き上がって話しかけちゃうかも(笑)。実際それくらいのロット数です。自分たちの音楽やアイテムが広まってほしい反面、広まりすぎるのは嫌だなっていうのもあって。矛盾しているんですけど。

――価値観の維持と経営のバランスってすごく難しいですよね。

KM:本当に。そこはやりながら考えていこうと思います。

トラップのビートで村上春樹を引用する

――BERLINETTA BOY NEEDS TOO MUCH MONEYのプロジェクトはKMさんにとってもかなり大きな一歩になったようですね。

KM:必要に迫られてやってみたけど、やりはじめたらすごく面白かったんですよね。これまではいわゆる宇宙語(アドリブ)で仮歌を作っていたんですよ。でも宇宙語を日本語に当てはめる作業がめっちゃ難しい。全然できない(笑)。みんなよくこんなことやってるなって、実際に自分でやってみて初めてわかりました。

Lil’ Leise But Gold:(笑)。KMにプロデュースしてもらう時、リリックのことで結構言い合いになっていたんですよ。「この部分は外したくない」とか。でも今回のアルバムを制作して、「前に言ってたことの意味が今わかった」って言ってくれました。

KM:俺が言ったままに歌を入れてくれればかっこよくなるのに、なんでみんな違う感じで歌を入れるのかがずっと不思議だったんです。実際に自分でやってみて、改めてみんながどれだけすごいことをやっているのか思い知らされましたね。ものすごく謙虚な気持ちになった(笑)。

Lil’ Leise But Gold:KMはBERLINETTA BOY NEEDS TOO MUCH MONEYをはじめたことでプロデューサーとしても成長したのではと思っています。勝手に(笑)。

――Lil’ Leise But Goldさんは『170 LLBG DUB (feat. Lil’ Leise But Gold)』でとんでもないラップを披露されていました。最初聴いた時、ラッパーとシンガーがそれぞれ参加していると思っちゃいました。アルバムを締めるのに相応しい迫力がある。

KM:なにげに俺らの名義でこういうトラップをやるのは初めてなんですよね。二人ともトラップビートに対する憧れがすごくあるからずっとやってみたくて。そしたらあんなのが出てきました(笑)。


KM, BERLINETTA BOY NEEDS TOO MUCH MONEY, Lil’ Leise But Gold – 170 LLBG DUB (Official Lyric Video)

Lil’ Leise But Gold:私は自分名義の曲をしばらく出せてないフラストレーションを全部ぶつけました(笑)。

――なるほど。

Lil’ Leise But Gold:今回のようなスタイルのラップに関しては、リリック提供とかでちょこちょこ作詞していたんですけど、自分のバースとして制作するのは新鮮でした。

――めっちゃかっこいいので、今後もやってほしいです。

Lil’ Leise But Gold:嬉しいです! 地元の話とかDJをどんな風にスタートしたかとか、結構初めて言うことが多かったのでドキドキしました。ちなみにKMからは数字を交えて遊んで欲しいというお題をもらっていました。

――フックの170はBPMですよね。64は小節数で、F348、300馬力はフェラーリというのはわかったんですが、最後の「16のつぎは41」「41飛ばし71」がわからなかったんです。

Lil’ Leise But Gold:この前、私がDJをしに行った時、居合わせたKMファンの方に同じこと質問されました(笑)。すぐに分からなかったからその時は「帰ったら確認するね」って伝えました。

KM:あの数字たちは村上春樹の「ダンス・ダンス・ダンス」で精神世界が描かれる時に出てくる数字なんです。16ってめっちゃ整理された美しい数字なんですよね。偶数だし、透明感がある。例えば、16歳って特別じゃないですか。で、41と71は素数で混沌を秘めている印象があって。混沌、カオスはいつも自分の頭の中に渦巻いているもの。

――シティボーイのBERLINETTA BOY NEEDS TOO MUCH MONEYがトラップのビートで「ダンス・ダンス・ダンス」を引き合いに出すのはかなりイケてますね。

KM:村上春樹を好きだと言うとなんか揶揄される風潮があるけど、俺はいまだに定期的に読み返すくらい好きなんですよね。

――KMさんは、「村上春樹は東京の遊び方がわかっている」と話されていましたもんね(朝日新聞社「好書好日」)。

KM:エッセイとかから読み取れる感覚はシティーボーイの教科書だと思います(笑)。

――客演の流れだと、SPARTAさんが参加した『Blue Hour』も素晴らしかったです。

KM:去年、SPARTAと一緒になることが多かったんですよ。11月に熊本でやった「JOMO」ってパーティーとか、年末の「#1229 Year End Party at MIDNIGHT EAST」とか。同じく共演だった(DJ/ライターの)shakkeくんが「二人が一緒にやれたらいいのね」と言ってくれて、ちょうど『Blue Hour』のデモができたタイミングだったので、ポッと投げたらポイっと返ってきました。

――数字遊びで言うと『The Fourteenth Night』のフックも面白かったです。「12平均律の宇宙」「13番目のコンダクター」「A Decent to the underworld Pass over, The Fourteenth Night」。

KM:12、13、14ですね。12はオクターブの話。13番目のコンダクターっていうのは、オクターブの世界から飛び出した存在っていうのと、13って安定してないイメージがあるんですよ。13日の金曜日とか、最後の晩餐とか。不吉なイメージがある。あとキリスト教では15は創造の完成を司る良い数字なんですよ。でも14はその一歩手前でカオスな状態なんですね。あとこの曲はJくん(JJJ)が歌うはずだったんですよ。


KM, BERLINETTA BOY NEEDS TOO MUCH MONEY – The Fourteenth Night (Official Lyric Video)

――「このビートは天国行っちゃったあの人のため」というラインもあります。

KM:ずっとやりとりをしていて、その2週間後にああいう連絡があって。だからこのビートには思い入れがありました。JくんがKMというプロデューサーを認めてくれたから今の俺がある。なんだろう……一流にしてくれたというか。アルバムでもライブでもKMっていっぱい言ってくれているし。本当に感謝してもしきれない。

――KMさんがプロデュースした『Scav』(「MAKTUB」収録)もライブの人気曲でした。

KM:あとは俺がタグ(I told you.響くBeats K to da M)にしているラインが入った『STRAND』も。Jくんがリリックで言ってくれたことで、リスナーの人が俺に興味を持ってくれたという背景がある。イベントとかで一緒になると、向こうから話しかけてくれて、それが自分的にも誇らしかった。そういうのもあったから、このビートは人に渡したくなかったんです。でもそのままストックしておくのも嫌だから、自分で歌うことにしました。この曲は最後までアルバムに入れるか迷っていたけど、結果的に入れて良かったなと思う。きっとリスナーの人たちにとってもJくんは大切な存在だから。

重く考えると気持ちも大変だから、自然と考えること

――個人的に『Language』には、KMさんのインテリジェンスが色濃く出ていると感じました。

KM:戦争の話になると、すぐに感情論がフォーカスされるけど、そもそも戦争反対なんて人として当たり前じゃないですか。そこで議論が終わってしまうと、本質が見えてこないと思うんですよ。『Language』で歌っているのは、そういう感情論の下で宗教や歴史、地政学も絡んで、株価が上下して利益が出ていたり、軍事的な技術が売れたり、アメリカや中国の政治的なカードになったり、これはニュースを読んでいたら普通に分かる話。戦争がなくならないのは経済も絡んでいるから。

「世界は円とか元とかドルで回ってる巨大なポーカーゲーム」って歌っている。この感覚はむしろ普通だと思う。でも「NO WAR」って言い合うのは、あれは解決のための議論じゃなくて、考えるのを忘れないためなんだなって思った。

――『Language』はパーティーのイメージを再定義しているとも思います。一般的にクラブの夜遊びは「パリピ」なんだろうけど、少なくともKMさんやshakkeくんがいるような現場はそういう雰囲気ではない。むしろコミュニティに近い。バカ話もするけど、真面目な意見交換もいっぱいしている。

KM:でも『Language』にはギャルや車の話とかも出てくる。意図的に描いたわけじゃなくて、俺が過ごした東京のクラブってそういう場所だったから。バーカンにはキラキラしてる女の子がたくさん居て。その横で先輩DJのRockとかFunkのレコードに纏わる話を聞いてるだけでも、当時のシーンの背景とか、知らないことをたくさん教えてもらえた。コミュニティーよりもユニティかも。年齢層も職業も地位もごちゃまぜだけど、一緒にパーティーを楽しんでる雰囲気。もちろん嫌なやつもいたけど(笑)。


KM, BERLINETTA BOY NEEDS TOO MUCH MONEY – Language (Official Lyric Video)

――同じムードをタイトル曲の『Post Poet』からも感じました。個人的に一番好きな曲です。

KM:「スクロールされてくジェノサイド」とか。どう処理していけばいいか分からない事がたくさんある。自然とああいう言葉が出てきました。一個思うのは、考え続けることですかね。重く考えると気持ちも大変だから、自然と考えること。

――あとはワンマンですね。3月6日に大阪公演が開催され、3月14日には東京公演が控えています。どんな雰囲気になりそうですか?

Lil’ Leise But Gold:絶賛順調に練習中のようです(笑)。

KM:この後もリハーサルです。Lil‘ Leise But Goldと『170』の練習をします。まさか妻と二人でリハスタに入る日が来るとは思ってなかった(笑)。もうすでに何回か練習しているんですけど、結構楽しくできています。というか新鮮なんですよね。俺にとってはトラックメイクが仕事になりすぎちゃっているから。

Lil’ Leise But Gold:でもこの前、すごく楽しそうに帰ってきた日があったよね。

KM:『STARLIGHT』ね。

Lil’ Leise But Gold:POP YOURSの曲で、ラッパー4人とKMが一緒にスタジオに入ったんだけど、みんなトイレにも行けないくらい集中していたらしく。

KM:誰かが席を立つと自分のバースが取られちゃうんじゃないかって心配してるんですよ。みんなピースなんだけど、クリエティブにはヒリヒリしていて。「RAPSTAR」で若い子を見ていてもみんなガチじゃないですか。本気で人生を変えようとしている。『STARLIGHT』のレコーディングにもそういう雰囲気があって最高だったんですよね。自分も若い頃は1分でも長くDJしたかったし。すごく刺激を受けましたね。


Kianna, HARKA, AOTO, Siero – STARLIGHT (Official Audio)

Lil’ Leise But Gold:そういうの見ちゃうとやっぱり気合い入るんじゃない?(笑)。

KM:楽しそうだから歌ってみたくなっちゃいました(笑)。ワンマンは俺がギターや鍵盤を弾いたり、いろんなパートがあるので楽しんでほしいです。自分の曲を自分で分解してライブをするんですが、自分にとっては初めての試みだから、今は一生懸命準備しているところですね。照明や映像チームと連携して、ちゃんとした世界観を表現したい。「プロデューサーでもこんなことできるんだ」って、一人でも面白く思ってもらえるようなものにしたいです。今作はラップをしているけど、自分の役目の中心にあるのはプロデューサーなので。

(ライブ情報)

KM / BERLINETTA BOY NEEDS TOO MUCH MONEY
『Post-Ftheworld Tour』

2026年3月14日(土)渋谷 WWW X
Open:18:00 / Start:19:00
前売:¥3,800 / 当日:¥4,300
チケット:https://eplus.jp/sf/detail/3499500001


KM
ヒップホップに根ざした音楽スタイルを保ちつつ、新しい領域に挑戦し続けている、日本で最も影響力のあるプロデューサーの一人。
オルタナティブなインディペンデント・アーティストからメインストリーム、ポップスまで幅広くプロデュースを手掛ける。これまでに「Lost」EP、ファースト・アルバム「FORTUNE GRAND」、セカンド・アルバム「EVERYTHING INSIDE」、(sic)boyの「CHAOS TAPE」、Lil’ Leise But Goldの「喧騒幻想」などをプロデュースしている。
DJとしてはアンダーグラウンドなパーティーからEDMフェスまで幅広いフィールドで活躍し、自身のリミックス/プロデュース曲だけでプレイするDJスタイルでも知られる。
2024年は、POP YOURSの楽曲Kaneee, Kohjiya & Yvng Patra『CHAMPIONS』のプロデュースを手掛け、オーディション番組「ラップスタア誕生2024」への楽曲提供も行う。3月に愛車Ferrari 348を入手してから本格的にアルバム制作に着手し、8月にシングル『DANCELIXIR』、11月6日にサード・アルバム「Ftheworld」をリリースした。
2025年は、日本最大級のヒップホップ・フェスティバル「POP YOURS」にソロで出演し、All Remixed by KMのDJセットで会場を熱狂させた。8月にはSkaaiとの共作EP「Podium」をリリース。2026年2月、自身のボーカルプロジェクト名義となるBERLINETTA BOY NEEDS TOO MUCH MONEYを始動しアルバム「Post Poet」をリリース。
Space Shower Music Awards 2022 “Best Producer”受賞。

Lil’ Leise But Gold
東京都出身のオルタネイティブR&Bアーティスト、シンガーソングライター。プロデューサーKMとは公私ともにパートナーであり、二児の母の顔も持つ。
幼少期から音楽のある環境に育ち、学祭のミュージカルでソロを演じるなど歌うことは身近にあったが、DJであったKMとの出会いからより音楽に傾倒していった。
2019年、シングル『(no)Reason』をリリースしアーティスト活動を始める。2020年5月にコロナ禍で制作したシングル『Aenaiya』を、2021年2月にはEP「Sleepless 364」をadd some labelsよりリリース。6月にリリースされたKMのアルバム「EVERYTHING INSIDE」にも参加し、WWW Xで開催された「KM EVERYTHING INSIDE LIVE」では初ライブながら圧巻のパフォーマンスで会場を魅了した。
また、日本とアメリカのカルチャーを繋ぐレーベルFrank Renaissanceのプロジェクト「A-Team’s Fables」や、シカゴ在住アーティストSen Morimotoのリミックスアルバムへ参加するなど活動の幅を広げている。2022年12月、ファーストアルバム「喧騒幻想」をリリース。

宮崎敬太
1977年生まれ、神奈川県出身。音楽ライター。オルタナティブなダンスミュージック、映画、マンガ、アニメ、ドラマ、動物が好き。WEB媒体での執筆活動の他、巻紗葉名義で「街のものがたり」(P-VINE BOOKS)を執筆、D.O自伝「悪党の詩」(彩図社)の構成なども担当。
Instagram:https://www.instagram.com/exo_keita/
X:https://x.com/djsexy2000

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