TOP記事投稿「できることは極限まで。ものづくりとは地味でシンプルなことの積み重ね」電子音楽家・tofubeatsが実践する創作の哲学

「できることは極限まで。ものづくりとは地味でシンプルなことの積み重ね」電子音楽家・tofubeatsが実践する創作の哲学

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「1of1」とは世界にひとつしかないもの/ことを指す言葉です。この連載は日本で「1of1」な活動をしているアーティストたちにフォーカスして、活動の軸になっている信念、制作へのこだわり、ライフスタイルなどさまざまなテーマを深掘りしていきます。

今回のゲストはtofubeatsさん。最新EP「Angels On The Dancefloor」の話題を中心に、横田信一郎(SHINICHIRO YOKOTA)さんを取材したMV『let me tell u』の裏話、そして柴田聡子さんを客演に迎えた『大丈夫』の作詞における葛藤などについてお話しいただきました。tofubeatsさんの活動を貫く哲学とは? 対話を通じて言葉の奥に秘められた矜持を紐解いていきます。

文:宮崎敬太 写真:雨宮透貴

日本産のクラブミュージックであることをしっかり打ち出す

――tofubeatsさんはすでに最新EP「Angels On The Dancefloor」についてたくさんお話しされていますが、制作する上では“J-CLUB”をどのように定義されているのですか?

“J-CLUB”って(音楽的には)あんまり定義されてないんですよね。そもそもCD屋やレコード屋の分類でしかないという。あえて言うなら、ニューヨーク・ハウスに端を発する国産のチャラいハウスとか、おしゃれなラウンジ・ミュージックみたいなもの。曖昧というか雑というか。しかも誰も自分の音楽を“J-CLUB”と名乗りでない敷居の低さ(笑)。そこにあえて自分から名乗っていくのが面白いかなと思うんですよ。だから僕自身も明確に音楽的な定義づけはしてなくて、雑いほうがよろしいと思っています。“J-CLUB”って言葉に自意識や定義ができてくるとおもしろさが失われるかなって。

――確かに“J-CLUB”というジャンルは、90〜00年代のCD屋やレコード屋の棚にしか存在しないジャンルかもしれないですね。

当事者は自称しないけど、みんなの中には確かにあったカテゴリーという意味では“渋谷系”に近いですよね。実際、僕自身も“渋谷系”と言っていた側だし、そもそも当時の“J-CLUB”からも距離があったんです。そういう場所にあえて飛び込んでいくのがおもしろいと思ったんですよ。もともとはワーナーの元担当者に「tofubeatsはJ-CLUB最後の残党」と言われたのがきっかけで、僕自身もふざけて言っていた部分もあるけど、ちゃんとコンセプトとして前景化したら結構面白いのではないかと思ったんです。そういう遊び方と言いますか。でも半分マジなところで言うと、日本産のクラブミュージックをしっかり打ち出してリリースしている人が近頃いないなっていうのもあって。

――電子音楽家の方はたくさんいるけど、クラブミュージックを打ち出して作品をリリースしている方はあまりいないかもしれないですね。

マジで思いつかなくなった。そういう思いはめっちゃありますね。


tofubeats – Angels On The Dancefloor

――表題曲「Angels On The Dancefloor」のパラデータ解説動画も面白かったです。DTM知識がない人間からすると、奥のほうにノイズが潜んでいるのが意外でした。

動画でもちょいちょい言っているんですが、「ドゥーン」みたいな切り替わりのSE音は、聴こえないけどJ-POPのサビ頭とかに9割は入っています。(「Angels On The Dancefloor」では)サビじゃないけど、サビみたいな気分になるイメージ。意味はあるけど、別に自分だけがやっていることではないです。ただそういうポップスの手法を(クラブミュージックに)持って帰ってきているのが“J-CLUB”っぽいかな、と。あとこういう手法を意外とみんな知らないので、解説動画として公開しています。ああいう音をある/なしで比べるとだいぶわかりやすい。


Angels On The Dancefloor パラデータ解説

――トーフさんの作品はポップな曲でもどこかざらっとしたものが残る印象だったので、もしかしたらあのノイズがそうした効果を生んでいるのかなと思っていました。

あ、それはあるかもしれないです。ピアノのフレーズは誰が弾いてもある程度同じに聴こえちゃうけど、ああいうノイジーな音やラフな音は(作り手によって)明確な違いが出る。同じ効果音を選ぶ確率って、同じピアノフレーズを選ぶ確率よりも低いと思う。さらに言えば、僕がアナログの機材を通すことも同様の理由です。そういう小さな他人との違いが細かく積み重なっていくことで、風合いが生まれてくると思っています。

インスト曲ならドキュメンタリーでもMVとして成立する

――『let me tell u』のMV、最高でした。国産ハウスミュージックのレジェンドである横田信一郎(SHINICHIRO YOKOTA)さんのドキュメンタリーをMVにしてしまうアイデアに驚きました。DJ MEHDI『Signatune (Thomas Bangalter Edit)』のMVから着想を得たそうですね。

そうそう。そのDaft PunkのThomas Bangalterがエディットした曲のMVと、さらにもうひとつソースがあって。Todd Terje『Inspector Norse』って曲で、PitchforkがドキュメンタリーみたいなMVを作っているんです。ノルウェイの田舎で暮らす数学教師のおじさんが、自分の家でドラッグを作って、自分で吸って、最後は警察に捕まっちゃうという内容なんですけど(笑)。インスト曲のMVならドキュメンタリーも観れちゃうよねと、うちの船津くんと話していたんです。そしたら彼が「横田さんのドキュメンタリーを撮ったらおもしろいんじゃないですか?」と提案してくれまして。


tofubeats – let me tell u

――素晴らしい。ハウスを作りながら、家業が車屋っていうのはあまりにもカッコ良すぎて。

車屋というか、車のカスタムパーツメーカーですね。もともと横田さんのお父さんが大田区で金属加工の工場を営まれていたんですよ。その後、横田さんが工場の技術力を活かして、カスタムパーツのブランドを立ち上げたっていう。僕もなんとなくそういう情報は知っていたけど、まさかパーツメーカーのほうが有名だとは思いませんでした(笑)。

――NIGHT-PAGERというブランド名も痺れますよね。

チューニング・カスタムの世界では日本を代表するブランドのひとつで。ドリフト第一世代の方たちの車にもNIGHT-PAGERのステッカーが貼られていたりもするみたいです。

――マンガ『頭文字D』の世界ですね。ちょっとヤンキーっぽい文化ということもあって、自分はかなり縁遠かったんですよね。

ヤンキーっぽいというか、もう大ヤンキーですよ(笑)。

――でもKMさんのインスタを見たり、VaVaさんやCDS界隈にもちょっと車文化があったりして、だんだん興味が出てきたタイミングだったんですよ。

CarServiceとかですよね。MVに出てきたShadow in the knack yardというカスタムショップでメンテしているみたいです。

――あと今更なんですが、最近ようやく「ドライブ・マイ・カー」を観まして。

サーブ。あの車はかっこいいっすよ。

――あの映画を観たのも、実はトーフさんがリツイートしていた濱口竜介監督のインタビュー記事を読んだのがきっかけのひとつなんです。

そうなんや(笑)。ちなみに僕が出演したbutajiさんのMVに出てくる車が「ドライブ・マイ・カー」と同じサーブなんです。オーナーは違う方なんですけど、同車種。


butaji | free me [Rearranged by tofubeats] (Official Music Video)

本当におしゃれな人は自分から何も言わない

――『let me tell u』のMVの概要欄にあったテキストも素晴らしかったです。

あれは船津くんのアジテーションです(笑)。そのテキストじゃないけど、僕も物を作る人には共通点があると思うんですよ。

――「機械と向き合い、自らの手で作り、試し、また作る」。

横田さんはまさにそれを実践されていますよね。もともとはヒップホップをやっていて、DJ KRUSHさんやMuroさんが結成していたKRUSH POSSEとか、あのへんの方たちのマニュピレーターとしてちょっと手伝われていたみたいです。

――トーフさんはMV撮影に参加されたんですか?

取材には同行できなかったんですが、そのあとプライベートで何回かご飯を食べに行く機会があって、車のお話やヒップホップやハウスミュージック黎明期の貴重なお話しをたくさん聞かせてもらいました。改めて思ったのは、横田さんのバイタリティの高さですね。自分では考えられない。だって早朝から工場で旋盤を回して、帰宅して夜から音楽を作るっていうのをずっと続けられているんですよ。兼業されている方の中では、ディスコグラフィーもかなり多いほうだと思います。あと横田さんの工場は一度倒産しかけていて。

――リーマンショック&東日本大震災後の頃ですかね。

そうそう。政府主催の「再チャレンジ懇談会」という会議で、安倍元首相に中小企業の窮状を15分間スピーチされたそうです。まだ残っているかわからないけど、内閣府のサイトにその時の動画があるとかないとか。

――めちゃくちゃかっこいいですね。

あと少し前に下町ボブスレーっていう企画があったじゃないですか。町工場の技術力を活かして世界で戦えるボブスレーのソリを作るっていう。あれ、大田区でなんです。しかも横田さんが仕切り役の一人だったりもして。もう掘れば掘るほど謎の情報が出てくるんです(笑)。本当におしゃれな人ってこうだよなって思いましたね。この仕事をしていると、直感的に(物を作る哲学が)合致する方がいらっしゃるけど、みなさんご自身では何も言わないんですよ。それをうちらみたいなもんが外からやいのやいの言ってひっぱりだしたっていうのが『let me tell u』のMVだったりします。

試行錯誤を繰り返した『Don’t You Know My Love? feat. 一十三十一』

――『Don’t You Know My Love? feat. 一十三十一』の作詞を一十三十一さんに作詞をお願いした意図を教えてください。

あの曲はフックだけあったんだけど、ヴァースの歌詞が全然書けなかったんですよ。「なんかもうできないし、ちょっとお願いしてみるのもいいかな」という感じで一十三十一さんにお願いしました。

――作詞を誰かに委ねるのはトーフさんの制作スタイル的には異例ですよね。

そうですね。マジで珍しいです。

――オフィシャルサイトでもご自身がリミックスした一十三十一さんの『Harbor Light(tofubeats harborland extended disco version)』(2013年)を引き合いに出して「この時にやりたかった…あとDJでプレイしていたようなスローなハウスのムードをまたやろうということで作ったのが本楽曲でした」と解説されていました(https://www.tofubeats.com/20260529_AOD)。

この曲は、僕が2000年代によく聴いていた、当時ビートダウンと呼ばれていたBPM110くらいのハウスを意識して作り始めたんですね。Mark EとかCrazy Pとか、あとDaniel Wangとか、あのへんの人たち。当時の僕はDJとしてもまだペーペーで、イベントの頭くらいに出てBPM110から始めて115くらいにして次のDJにパスする役割が多くて。このへんの曲をよくかけていたんです。僕自身遅いハウスやディスコダブも好きだから自分でも作りたかったんですよね。

――なるほど。トラックが求める歌の雰囲気に合う歌詞が出てこなかったわけですね。

まさに。でも、本当に歌が必要かを検証するためにヴォーカロイドに歌わせたフックのリフレインだけのヴァージョンも作って、フロアでプレイしてみたりもしたけど、やっぱり歌があったほうが良さそうだという結論に至り。そこから半年くらいフックだけある状態で歌詞を考えたけど進まなかったので……。

――一十三十一さんにオファーした、と。でも、結果コラボが良い方向に進んだように感じました。

ありがとうございます。メロディーとフックはできていたので、ヒトミさんならゾーンを外すことはないだろうという信頼感もありました。実際、いただいた歌詞は一発OKでした。

柴田聡子さんは良い意味で怖い

――今作はわんちゃんとお散歩しているジャケも素晴らしいです。『大丈夫 feat. 柴田聡子』は山根慶丈さんのイラストと岩屋民穂(GraphersRock)がデザインしたこのジャケからのメージを膨らませていったとか。

この犬ジャケ、かわいいですよね。

――5月後半リリースなのに、真冬仕様っていう。

船津くん曰く「J-CLUB冬の時代」のメタファーだそうです(笑)。これから春を迎えるぞっていう。実はこれ、民穂さんの息子さんの写真が元ネタなんです。子供が外でポーズしてる写真があって、それを民穂さんから山根さんにリファレンスとして送ってこの絵ができていきました。僕、歩道というモチーフが好きで。歩くことをすごく重要視している。街路樹とか、散歩道とか、そういう言葉を使ってその気分を曲にしたいとは常々思っていました。そしたらこのジャケも出てきて、「このテーマなら柴田さんに歌ってもらえるのでは」という形でいろいろ合流した結果出来上がった曲ですね。

――柴田さんにはどんな説明をしたんですか?

この曲に関しては、こちらから柴田さんの(発想の)幅を狭めない形で作りましたね。というか、プリプロをもらった時点で、すでに柴田さんの中にイメージがある感じだったんです。迷いがないというか、めっちゃ予習していただいているというか。で、レコーディングのスタジオに行ったら、プリプロよりもさらに良くて、「もう何も言うことないです」みたいな(笑)。レコーディング自体もマジで早かったです。

――ほぼ一発OK?

ボリュームを合わせるのに何回か録って、本番のヴォーカル録りも1、2回程度ですね。

――柴田さんと自作で共演した感想を教えてください。

柴田さんは歳上で、何回もライブを拝見していて、やっぱマジでかっこいい人なんですよ。良い意味で怖い。

――自分がリスペクトしている相手には、こちらが勝手に怖さを感じてしまいます。

そうそう。僕は柴田さんの曲を聴いていると敬虔な気持ちにさせられる。だから「この人にはこの人の世界が明確にあるのに自分の作品に参加してもらう意味はあるのか」という部分をめちゃくちゃ考えました。柴田さんはキャリアを重ねる中で、良い意味で明らかに変化している方だと思う。本当に結構尊敬できるミュージシャンの1人です。しかも特に歌詞に強みがある方に自分が歌詞を書いて渡すとなると……。「大したことない」って思われるのも嫌だなっていう自分なりの気持ちもありましたし。まあ柴田さんは絶対にそんなこと言わない方ですけど。僕としては、柴田さんにリミックスで呼んでいただけるくらいがちょうどいい緊張感。精神的なプレッシャーが比較的軽い(笑)。

――トーフさんは他人が歌う曲の歌詞を書くことに対して強い責任感をお持ちですもんね。

まあそういう葛藤が色々あったので、自分の中での判断を通過する言葉がなかなか見つかりませんでしたね。実は『I CAN FEEL IT』(「NOBODY」)も柴田さんが客演候補だったんです。というか、これまで何度もそういうのがあったんですけど、自分の中で「違うだろう」と思ってオファーに至らなかったんです。

柴田さんがその言葉を歌う意味があるか否か

――『I CAN FEEL IT』と『大丈夫』を分けた差はなんだったのでしょうか?

その言葉を柴田さんが言う意味があるか否かっていうところです。まあ単に僕が言ってほしいだけっていうのもあるんですけど(笑)。冗談はさておき、『大丈夫』は、柴田さんが他人に向けて発射する言葉として意味があると思ったんです。逆に言うと、そうじゃないと何回も歌う曲にならないかなという思いがずっとあって。だからあの曲は、柴田さんが他人を勇気づけているのか、柴田さんの内省なのかという部分でもかなり調整作業を頑張りましたね。

――どちらともとれるからこそ、『大丈夫』は大丈夫じゃない人に寄り添った歌になったと思いました。

さらに言うと、歌っている人が大丈夫じゃないのに強がっているように感じられるようにもしています。だから実は最初はバッドエンドとも取れるような展開だったんです。でも「これは違う」と思って。細かいニュアンスではあるんですが、本当にいろいろと調整して、(歌詞に)幅を持たせました。ただそこは聴いている人が判断してくれていいと思っています。

――「Angels On The Dancefloor」というタイトルのEPに入っているからかもしれないけど、『大丈夫』は以前お話しされていた“パワー・オブ・ミュージック理論”(https://rollingstonejapan.com/articles/detail/42501/4/1/1)にも通じるように感じました。

「Angels On The Dancefloor」なんて直訳みたいなもんですしね(笑)。ただ“パワー・オブ・ミュージック理論”みたいな考え方って、ほとんど宗教みたいなもんなんですよね。良いことばかりじゃない。だって「クリエイティブであることはいいことだ」という考え方は、同時にそうでない人を差別することになる。無意識のうちに。これは本当に良くない。20代の頃から感じていました。人からもよく指摘されますし、ものすごく反省もしています。

――音楽が好き、という考え方が先鋭化した結果、無意識のうちにそうでない人を差別することになってしまった。

そう。何かを作っている人が偉いと無意識に思っている部分がある。本来は全然そんなことないのに。

――先ほどお話しいただいた柴田さんに対してリスペクトするあまりに恐れてしまうことも“パワー・オブ・ミュージック理論”の呪いのひとつかもしれませんね。

そうですね。自分がやっていることの上ができる人をなんか尊敬してしまうという。

――僕もアーティストの方や、ライターの先輩に対してリスペクトしすぎてよそよそしくなってしまうんですよ。取材以外では全然フランクに話せない……。

めっちゃわかります! 柴田さんに関しては、ちょっと上の先輩ということもあって、一番緊張しちゃう(笑)。

電子音楽家の活動をもっと綺麗に明るくポップに見せたい

――すでにいろんなところでお話しされていますが、今作の収録曲の大半は1〜2年くらい前にはできていて、クラブプレイでフロアの反応を見ながらブラッシュアップしていったそうですね。

うん。『大丈夫』以外はそういう形で制作しました。自分は一人でやっているので、作ったものをいくらでも直せる。そのメリットを享受したほうがいいなっていうか、こういうやり方のほうが自分に向いている。やっぱリリースした曲を現場で使ってみると、「ここは違うな」とか「こうしたほうが良かった」みたいなとこが結構出てきちゃうんですよ。リリース時にドンッと出すことに意味があることもわかるけど、サブスクとかで音楽を聴く理由って、リリースされたから聴くわけではなくて、その曲を好きだから聴いていると思うんです。それだったら良いと思ってもらえることをもっと大事にしたいし、こちらとしてはできることを極限までしておきたいという意図がありました。

――ちょっと気が早いですが、そろそろアルバムの準備をしていたり?

ざっくりとですけどコンセプトを考え出したところですね。そもそも今回収録した『大丈夫』はEPバージョンという体なんで。次作にはもっとJ-CLUBっぽいものを入れたいし、ニューヨークハウスみたいな曲も入れたい。すでに現場にはちょっとずつ投下していて、反応を見つつ直していっているところです。でも(アルバムとしては)もうちょっとバラエティに富んだものになると思う。ちなみに一昨日くらいにゴミみたいなフィルターハウスができて、(マネージャーの)杉生さんには「呪われてるな」と言われました(笑)。

――とはいえ、「ボツがない」というtofubeatsルールがあると伺った記憶もあるので、その曲が今後どうブラッシュアップされていくのかも楽しみです。

(笑)。そういえば秋に次の「NIGHT HIKE」(※筆者註:ネットカルチャーにスポットを当てたクラブイベント。渋谷・wombで2023年からスタートした)が開催されるんですが、会場は幕張メッセなんですね。ボカロっぽい感じはもはや一大ムーブメントになっている。でも僕は自分がエレクトロニックミュージックのアーティストとして一本立ちした状態で、アニメっぽいところのパワーも借りず、それこそMaltine Recordsからリリースされているような音楽をもっと綺麗に明るくポップに見せたいんです。そこが今本当に薄くなっているから。

――自分の世代だと電気グルーヴとか。

僕が始めた頃は中田ヤスタカさんがCAPSULEとして活動されていましたし。みなさん、現在はプロデューサーとして活躍されているけど、自分みたいに作品を出している人は全然いないので、そこは頑張りたいんですよね。

――トーフさんはご自身のDJプレイをYouTubeにアップされているのにはどんな意図があるのですか?

幸いなことに自分の身の回りには、自分のDJに対して悪口を言う人たちがいないんですね。だったら自分で自分を律しないといけないよねっていうのがあって。YouTubeにアップしたら同じことを何回もやれないじゃないですか。

――プレイをルーティン化しないために。

YouTubeをよく観てくださる方や、頻繁に来てくれているお客さんに「また同じつなぎをしてるな」「サボってんな」と思われないように(笑)。あとは単純に入り口が広がるなって。みんながみんなクラブに行くのが好きなわけじゃないと思うんですよ。コロナ禍以降はだいぶクラブの雰囲気も変わったとはいえ、やっぱ苦手な人がいるのもわかる。そういう人たちに「音源だけでも聴いてみてね」っていう。僕としては「こういう感じですよ」っていうのが伝わればそれでいいかなと思っています。それに、もしかしたら新たに足を運んでくれるきっかけになるかもしれないし。

やっぱりシンプルな積み重ねが強みになる

――HIHATTも13年目に突入します。その間、コロナ禍があり、現在は円安が進み続けています。そんな状況でもレーベル運営を続けるために、どのようなことを大切にしているのでしょうか?

この先行き不透明さに関しては、設立当初から本当に困っていますね。じゃあ何を意識しているのかといえば、本業を疎かにしないことですかね。ただ僕は本当に運が良い。コロナ禍もその前の蓄えがあったから乗り切れましたし。それにメジャーデビューもしていたから(コロナ禍は)大丈夫だったんですよね。たぶん他のミュージシャンの方々よりも楽していると思います。

――そうか。ヒット曲『LONELY NIGHTS』もコロナ前の2017年リリースなんですね。

会社を作ってから大赤字を出したこともなくて。微細な赤字年度とか普通にありますけど、それは事業がうまくいってないから出るものではなくて、会計的な話だから。自分の見通しの甘さによるちょっとしたミスみたいなことでしかないので、日々をちゃんとやっていれば大コケすることはないのかもなとは思っていますね。別に事業計画とかも全然ないですし。

――2025年10月に開催された「HIHATT10周年パーティー」では、プロジェクターを使ってHIHATTのプレゼンをされていましたね。

演者と演者の転換タイミングに「なんかやれ」と言われたので、「じゃあ会社のプレゼンやりますわ」みたいなノリでやりましたね(笑)。あの時のファイルまだ残ってますよ。ちょっと待ってくださいね……(しばしパソコンを触る)……あった。「10年のあゆみ」。ちょっと開いてみましょう。……なんかこうして観ると結構増減がありますね。

――下がっているのはコロナ禍ですね。

そうっすよね。設立年度は半年くらいしかないので、そこからちゃんと成長していたんですよ。コロナ禍で一回落ちたけど、その後は順調に戻して2023年には最高利益を出せました。2026年はまだわからないけど、このままいけば結構良い感じになりそう。ただ最近、スタジオを改造したり機材を購入したり、その分の出費はあるので、営業損益という面ではあんまりインパクトがなさそうですね(笑)。

――トーフさんは以前のインタビューで「何をやっているのかよくわからない人になりたい」とお話しされていましたが、会社経営やライフプランを踏まえて、改めてどのようなミュージシャンになりたいですか?

おしゃれな人になりたいと思っています。横田さんのように寡黙にやるべきことをやっていく人。ああいう人に本当になりたい。僕はもうおしゃべりが止まらないので自分でも困っているんですよ(笑)。

――会社のプレゼンをしちゃうし(笑)。

そうそう。ちょっと時間くれれば財務諸表の話とかしちゃいますから。まあでも逆にそういうことを話せるミュージシャンも今や貴重かなとも思っていて。この前もTeddyLoidくんと飲みに行って、延々と会社の話をして盛り上がりました。「こんな話できるのテディくんだけやわ」って。すっごい楽しかった。

――なるほど。そういう意味でも今作で横田さんと深く繋がれたのはトーフさんにとって大きな意味がありましたね。

うん。やっぱりシンプルな積み重ねが強い。そういうことを体感させてもらいました。横田さんや寺田創一さんとお話ししていると何かに到達されている印象を受けるんです。僕もやるべきことをいっぱいやって、そういうおしゃれな人になっていけたらいいなと思っています。

(イベント情報)
Angels On The DancefloorRelease party -Osaka-
会場:CIRCUS OSAKA
日時:2026年8月10日(月、祝前日) 開場・開演 23:00
出演:tofubeats/Shinichiro Yokota/C◎KE/crazysalt/u-koh
チケット:イープラス

(リリース情報)

tofubeats『大丈夫 feat. 柴田聡子 / 大丈夫 feat. 柴田聡子 (Slowly Remix)』
発売日:2026年10月28日(水)
品番:HR7S359
フォーマット:7インチシングルレコード


tofubeats『Angels On The Dancefloor / Don’t You Know My Love? feat. 一十三十一』
発売日:2026年10月28日(水)
品番:HR12S037
フォーマット:12インチシングルレコード


tofubeats
神戸出身の音楽プロデューサー/DJ。学生時代から様々なアーティストのプロデュースや楽曲提供、楽曲のリミックスを行う。
2013年4月に「水星 feat.オノマトペ大臣」を収録した自主制作アルバム「lost decade」を発売。
同年11月には森高千里をゲストボーカルに迎えた「Don’t Stop The Music」でワーナーミュージック・ジャパン内のレーベルunBORDEからメジャーデビュー。
2014年10月にメジャー1stアルバム「First Album」をリリースし、以降もコンスタントに作品を発表している。
2022年5月には約4年ぶりとなるニューアルバム「REFLECTION」と、初の書籍「トーフビーツの難聴日記」を同時に発表した。
2022年11月3日に「REFLECTION」のLP盤及び「REFLECTION REMIXES」を配信リリース。
2023年1月にはUKのDJ QとのコラボEP「A440」、同年9月には神戸を舞台にしたNHKドラマ「わたしの一番最悪なともだち」の主題歌『メロディ』と劇伴を担当。
2024年7月には、全曲のボーカルをAI 歌声合成ソフトで制作したEP「NOBODY」をリリース。
2025年にはNeibissをフィーチャリングしたシングル『ON & ON』『Fallin’』、TBSラジオ「アフター6ジャンクション」内で放送されたラジオドラマ「寿司スナイパーオカミ」オリジナル・サウンドトラックをリリース。
2026年5月には9曲入りのEP「Angels On The Dancefloor」をリリース、7月26日(CIRCUS TOKYO)、8月10日(CIRCUS OSAKA)にリリースパーティーを行う。

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