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インタビュー時にアーティストが心得ておくべきことは?取材でうまく話すコツを専門家に聞く

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音楽活動を始めると、ついてまわるのが「インタビュー取材」。

インタビューは、ファンに楽曲を深く知ってもらい、新しいリスナーに音楽を届けることができる重要な手段です。

しかし、アーティストの中には「話すのは苦手だからインタビューは受けたくない」「インタビューに力を入れるより音楽活動をしていたい」という人も珍しくありません。

今回は、そんなアーティストのために、インタビューを受けるときのコツを言語コミュニケーション専門家である野中アンディさんにお伺いしました。


<野中アンディさんプロフィール>
福岡大学卒業。米カンザス大学にてコミュニケーション学修士を取得。帰国後、西南学院大学大学院文学研究科でコミュニケーション学を探究し、同研究科初の博士号を取得。関東学院大学にてコミュニケーション学と英語を教えたのち、株式会社コムスキル代表取締役、一般社団法人コミュニケーションスキル協会代表理事を務める。大学入試センター試験英語問題作成委員。ラジオ出演、講演、研修等の活動も精力的にこなしている。

話す内容ではなく「話し方」を鍛えよう

――まず、インタビューで最も重要なことは何でしょうか?

私は「話し方」だと考えています。

――意外なお答えです!話す内容より話し方の方が重要なのでしょうか?

そうです。

まず、若い方が「内容」で差を出すのはかなり難しいんです。経験が浅い分、どうしても考えは似てしまう。であれば、話すなかにキラリと光る表現を散りばめる方が興味を持ってもらえるんですね。

また、オリジナリティのある考えを持っている場合も、やはり話し方が重要です。アーティストのユニークな考えは一般人には理解しにくいので、伝え方に注意しないと誤差が生まれてしまいます。

ファンには通じることでも、インタビューを読んだファン以外の人には理解されないかもしれません。自分の考えや世界観を正確に伝えるためにも、話し方を磨くことは必要だと思います。

――「インタビューがうまい=話す内容がいい」と思われがちですが、実は話し方が重要なんですね。話し方を上達させるためにはどうすればよいのでしょうか?

効果的なのは、パブリックスピーキングのを学びです。これは古代ギリシアから始まった学問で、欧米の大学では必須科目になっています。

特にアメリカでは「人前で話せて初めて一人前」という考えがあるため、小さい頃から洗練された話し方の訓練をします。

そのため、アーティストでもアスリートでも、日本人と比べてインタビューの受け答えがとてもうまいんですよ。

――日本だとインタビューは「おまけの活動」だと思われがちですが、欧米では重要な活動とされているんですね!

気をつけることは修辞・正確な文法・論理

――パブリックスピーキングでは、具体的にどういうことを学ぶのでしょうか。

私が手掛けているパブリックスピーキングの講座で訓練する内容は3つだけです。

「修辞」「正確な文法」「論理」、これらを練習するだけでうまくインタビューで話せるようになります。

――順番にお伺いしたいです!1つ目の「修辞」の訓練とは何でしょうか?

修辞とは、言葉の飾りつけです。これはつまり豊富な語彙で話すことを指します。

話すのが苦手という方は、語彙が少なく、同じ表現を何度も繰り返してしまっているんです。

繰り返しを防ぐだけで内容が伝わりやすくなり、会話に知性を感じるようになります。

――語彙を増やすにはかなりの努力と時間がかかりそうです……。

語彙を増やすために、辞書でたくさん単語を覚えたり、たくさん本を読んだりする必要はないんです。

たとえば、私の会社は福岡にありますが、博多の名産品である明太子は英語でSpicy pollack roe(辛いスケトウダラの魚卵)です。でも、これだとおいしさが伝わりませんよね。

せっかくインバウンドで海外からのお客様が来られているのにこれではもったいない。こうした訳はAIを使っているために生じます。

これを人間が翻訳して「Spicy Hakata caviar(辛い博多のキャビア)」とすると高級感やおいしさが直感的に伝わります。

こうした伝わりやすい言い換えをすることで、理解の誤差を防ぐことができます。

つまり、語彙を増やすとは「うまい言い換えをする」ということなんです。

ちょっと練習するだけで誰でもすぐにできるようになりますし、これがファンの心を捉えます。

――言い換えを意識するだけでぐっと伝わりやすくなるんですね! 他に修辞で気をつけるべきことはありますか?

もうひとつ、みんなが使う言葉を使わないのも話し方をよくするために有効です。

たとえば、最近であれば「寄り添う」「〇〇一択」といった表現がよく聞かれます。こうした頻繁に聞く表現を避けるだけで、会話が洗練されるんですよ。

だって手垢が付いた表現には新鮮さがありませんからね。

それから断定することも大事です。

「〜と思います」「〜という気がします」ではなく、はっきりと言い切ることが信頼感につながります。

――次に2つ目のコツである「正しい文法」についてお聞きできますか。

文法については、動詞ではなく名詞を使うことを意識してください。

たとえば、「趣味は食べることや寝ることです」ではなく「趣味は食の探求と睡眠の質の向上です」といえば、意味は同じでも響きが変わります。

これは簡単に受け答えを洗練させることができる方法なので、ぜひ実践してみてください。

――知的なイメージを持って欲しいアーティストには特に参考になるコツですね。3つ目の「論理」についてもお聞きしたいです。

論理は少し難しそうに感じますが、これは背景・課題・解決策の順で話すということです。

自己紹介で例えるなら、「こんな風に社会が変化しています。そのためこんな課題があります。それを解決するのが私の仕事です」といった流れなら聞き手が理解しやすいんです。

論理の基本とは、相手が分かりやすい展開です。

――どれもアーティストにとって具体的で実践できそうなコツですね!

自分が話したいことではなくファンが聞きたいことを話そう

――インタビュー前の準備についてもお聞きしたいです。取材されることが決まったら、最初に何をすべきでしょうか?

まず(質問に対して)何を話すか整理しましょう。このとき、できれば原稿にして書き出します。

それから、受け答えのシミュレーションをします。頭の中でもかまわないので、どういう風に話すかイメージしてみましょう。

あとは、さきほどの言い換えや断定などの話し方のコツをうまく実践できるか練習するのもいいですね。

インタビューは準備が重要なので、1か月前から準備を始めておくのがおすすめです。

――話す内容を考えるときは「自分が話したい内容」と「ファンが聞きたい内容」のどちらを優先するべきでしょうか?

ファンが聞きたいことを最優先にすべきですね。

聴衆分析と呼ばれる、聞き手のバックグラウンドや知識に合わせた事前の準備が効果的です。

パブリックスピーキングをするときはこれが基本になるので、ファンが聞きたい内容が何かを知り、それに合わせるべきなんです。

――インタビューを受けると「なぜこの歌詞にしたのかと聞かれたが『なんとなくそうした』以外に答えることがない」「大人の事情でファンに話せないことを質問された」といったことも起きます。ファンが聞きたいことにアーティストが答えられない場合、どうするのがおすすめですか?

(答えにくい質問や答えたくない質問については)事前にブレインストーミングをするのがよいと思います。

まず、テーマについてなんでもいいから思ったことを20個書き出してください。

その書き出した内容を3つにわけると、自分が思っていることや言いたかったことがおよそ見えてくるんです。

わけるのは3つまでにしてくださいね。3はマジックナンバーなんです。なぜかというと、人間が理解できる話題として最も効率の良い数だからなんです。

少し準備に時間がかかる方法ですが、話したいことがないときには試してみてください。

――次にインタビュー本番の対応についてお聞きします。インタビュアーとの相性が悪く、自分のペースがつかめないときはどうすればよいでしょうか?

自分のペースをつかみたいときは、会話の「間」を大事にしてください

「間」というのは話し相手にも連鎖するので、会話のペースがつかめるようになりますし、(考える時間ができて)次の言葉も出しやすくなります。

それから、相手に「答えにくい」ということをはっきりと伝えるのもよいと思います。

嫌悪感を伝えたり悪口を言ったりするという意味ではなく、「こういう質問なら答えやすいです」「ここは答えにくいです」と伝えるとお互いにとってよいと思います。

――インタビューに答えるときは、とっさに失言してしまうこともあります。そんなときはどう取り返せばいいでしょうか?

これは文化によって異なります。

アメリカであればジョークで流すのが最もよいとされますが、日本では謝罪が最も多いです。

個人的には謝罪とジョークを組み合わせて切り抜けるのがベストだと思いますよ。

「おっとこの詳細はまた次回お伝えできるかもしれませんね。」とか「すみません、ちょっと喋りすぎちゃいましたか!」も、場合によっては使えるかもしれません。

ただ、場の空気と展開の流れを読む能力はいつでも求められますので、答えるときは失言しないよう慎重になる必要がありますね。

――インタビューや話のうまさは生まれつきで変えられないと思いがちですが、訓練したりコツを意識したりすることで変えられることがよくわかりました!本日はありがとうございました!

<コミュニケーションスキル協会(CSA)のプライベートレッスン>
CSAのアーティスト向けプライベートレッスンでは、使うべき表現、使うべきでない表現のマニュアルを基に、論理的、修辞的、かつ文法的に洗練された日本語を使えるようになります。
存在感のある日本語を学べる講座の詳細はこちらからご確認ください。
https://commskill.net/formedia

TEXT:まいしろ

(プロフィール)
エンタメ分析家。データ分析やインタビューを通して、なんでもないことを真剣に調べてみた記事をたくさん書いてます。音楽と映画が特に好き!
X:https://x.com/_maishilo_
note:https://note.com/maishilo

 

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