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近藤薫インタビュー〜ライブハウス開業までのキャリアから読み解くその行動原理

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自身のソロ活動やドラマー小林秀樹さんとのユニット「moZku」での活動と並行して、V6、渡辺美里さん、HALCALI、AKB48、東方神起、℃-ute、アンジュルムなど数多くのアーティストへの楽曲提供を行ってきた近藤薫さん。

こうしたアーティスト/クリエイターとしての活動に加え、2011年からは株式会社miuzicを立ち上げ、音楽レーベル「miuzic Entertainment」の運営とともに、多くのアイドル/アーティスト/作家らのマネジメントやプロデュースにも注力しています。

そんな近藤薫さんが2024年7月、静岡駅近くにライブハウス「Magical River」をオープンしたという情報をキャッチしたため、現地にお邪魔して今回のライブハウス開業を含む、近藤さんの多岐に亘る活動についてお話を伺ってきました。


近藤薫
シンガーソングライター、作詞家・作編曲家、音楽プロデューサー
愛知県出身

1997年にバンド「スィートショップ」を結成、1999年に同バンドのボーカルとしてメジャーデビュー
2003年に「スィートショップ」を解散したのち、2004年からソロ活動を本格化
2006年、ソロとしてのセカンドシングル『ハロー&グッバイ』がOVA版『テニスの王子様』(Vol.1 – Vol.5)のエンディングテーマとなる
2007年、ドラマーの小林秀樹とのユニット「moZku」を結成
同年リリースのV6『HONEY BEAT』『ジャスミン』をはじめ、渡辺美里、HALCALI、AKB48、東方神起、℃-ute、アンジュルムなど数多くのアイドル/アーティストへの楽曲提供も精力的に行う
2011年、公式ソングを制作した「築地銀だこ」を運営する株式会社ホットランドが中心となって立ち上げた「東北応援プロジェクト〜明日もがんばろう!〜」に協力するため「ホット横丁石巻」内に「近藤レコード店」(現:株式会社miuzic)を設立、これ以降、株式会社miuzicは「音楽×〇〇」という掛け算の可能性を求めて様々な事業を展開している
静岡での活動のきっかけは、静岡のケーブルテレビ局「TOKAIケーブルネットワーク」の人気歌番組「トコカラグランプリ」の審査員を務めたこと

想定外だった駅近物件をほぼ即決

――「Magical River」の開業、おめでとうございます。どのような経緯でライブハウスを作ることになったのでしょうか。

自社のライブハウスがあるといいな、ということはずっと頭の片隅にあって。

ただ途方もない工事費がかかるだろうし、そんなの絶対無理だろうなと思っていたんです。でもあるとき駐車場の端っこにガレージ作ってステージを設けて、所属アーティストのスケジュールが空いているときにライブできる、そんなイメージなら少しだけ現実味があるんじゃないか、って思っちゃって。それで不動産屋さんに連絡して、こんなことを考えているんだけど、郊外でもいいのでそんな物件ないですか?って聞いてみたんです。

ほどなく「いくつかピックアップしてきました」という連絡があって、出してきてくれた物件はどれもいわゆる店舗用のテナント物件で、イメージとはかけ離れていました。でも、そのなかの一つがこの物件だったんです。

――JR静岡駅に直結している地下街で、新幹線の改札を出てから10分もかからないすごく便利なところですね。当初はこういう駅近、しかも地下街の一角というイメージは…

全然ありませんでした。テナントだとしても、もともとライブハウスのところに居抜きで入らないと、資金的に絶対無理だと思っていて、静岡にはそもそもライブハウスが多くないので諦めていたんですね。でもこんなにアクセスの良いところでできたら確かにいいよね、と思って、ちょっと1回見せてくださいって言ったのが最初ですね。

それで結局、この物件しか見てないんです。

ここは紺屋町地下街といって、近隣のテナントはもちろん、通行するだけの方もたくさんいらっしゃるので、音の問題を含めてライブハウスという業態をオーナーさんに許可していただけたら、という状況でしたが、自分としてはほぼ即決でした。それが2023年10月で、それから銀行に資金を融資してもらえるように交渉したりして、2024年1月に契約が完了しました。


「Magical River」
静岡市葵区紺屋町3-5 コスモスビルB1
https://magical-river.com/

約9年ぶりのソロアルバムに込められた想い

――ライブハウスの話題から少し脱線してしまいますが、まさに内見から契約までの間となる2023年11月30日に、約9年ぶりとなるソロアルバム「SINGER SONG WRITER」をリリースされています。

バンドでデビューした自分がアーティストもやりながら楽曲提供も行っている、だからこそアイドルやアーティストを輝かせることのお手伝いができる、というこだわりがありましたが、経営のほうの比重が大きくなって、アーティストとしての活動ができなくなっていました。

コロナもありましたけど、それでも自分の曲を求めてくださる方がずっと居てくれて、それに応えたい、作らなきゃ作らなきゃ、と思いながら9年も経ってしまいました。

――では、収録曲の制作時期というのは。

バラバラですね。2016年にシングルとしてリリースしていた『スタンプ』を含めて7〜8曲はあって、ミニアルバムにはなるかな、という感じだったんですけど、もう少しでアルバムにできそうだなと思って、新たに数曲作りました。

――『Days』『目黒川』の作詞・作曲は今井晶規さんですね。

今井くんっていうのは「スィートショップ」をやっていたときのギターの方ですね(笑)。彼はバンドを解散したあと、しばらくは作家事務所に入って楽曲提供の仕事をやっていたんですけど、いまは結婚して大阪に行って、自営業で色んなことをやっています。

いまでも趣味で曲を作っていて、たまに「できたから聴いてよ」って送られてくるんです。それで聴いたら、やっぱりいいな、と思って、ちょうどアルバム制作とタイミングが合って形にできました。

実は、送られてきてもリンクを開かずそのままにしてしまっていた曲もあって(笑)、あとからメールの履歴を辿って、再送してもらったりしました。

――楽曲提供ではない、自分のための曲作りをされて再確認したことはありますか。

自分で歌うから、メロディーなどの制約がなく誰にも遠慮しなくていいのは新鮮でした。
自分ではないアイドルの方とか、特に新人の方などに書くときは、この音域はちょっと出ないかなとか、どうしてもいろんなことを無意識に制限して作っていたんだなっていうことは、自分の作品を作ってみてあらためて思いましたね。

レコーディングエンジニアになりたくて上京

――近藤さんは高校生のときにバンド活動を始められましたが、愛知から東京に出てこられる際には音響の専門学校に入られています。このときは、自分がアーティストになろうというお考えはなかったのでしょうか。

なかったですね。裏方の仕事をやりたい、レコーディングエンジニアになりたいと思っていました。
自分がバンドで成功するなんて夢のまた夢みたいな、何かちょっと冷静なところがあって。でも音楽は好きだし音楽に関わっていたいってことで、音楽関係の仕事って何かあるのかなって調べたりしたんじゃないかなと思います。

――バンドをやるきっかけは。

ちょうど高校生のときにバンドブームだったんですよね。THE BLUE HEARTS、ZIGGY、JUN SKY WALKER(S)とかを観て、自分はギターをやりたくなったんですけど、どうすればいいか分からなくって。

そしたら従兄がギターをやっているって親から聞いて、ギターを借りたんですけどアコースティックギターだったんですね。アコースティックギターってバンドマンとはちょっと違うんじゃないかと思ったんですけど、こういう人たちもいるんだよって従兄が教えてくれたのが、浜田省吾さんや長渕剛さんでした。

それでコード譜を買って練習して、ある程度分かったところでエレキギターに移行しました。

――専門学校を卒業するとき、テレビ関係の内定を蹴って、スカウトされた芸能事務所に入ったとか。

ぼくの親じゃないかってくらいよく知ってますね(笑)。
カラオケスナックで歌っていたらスカウトされたんですね。

――当時からスカウトされるほど歌がお上手だったということだと思います。何か歌のレッスンとかは受けられていたのでしょうか。

いや、その芸能事務所に入ってから初めてボイトレを受けました。作曲も、学生のころは機材の勉強を兼ねて続けていた感じです。

ただ、スカウトされて事務所に所属しているのに、レッスン料を取られるんですよね。いまとなってはそういう世の中のしくみはよく分かってしまうんですけど、当時は分からなかった。幸い、ボイトレの先生が「このままレッスンを続けていてもデビューするのは難しいんだよ」と正直に教えてくれる方で(笑)。

それで芸能事務所をやめて、高校の同級生だった今井くんらと「スィートショップ」を結成して、数回ライブをやったところでポリドールさんに声をかけられ、1999年にメジャーデビューするという。いまとなってはよくあの状態で契約してくれたな、と思います。

あとになって「曲を評価した」ということを言われたんですけど、それはうれしかったですね。

――バンドとしての演奏力とか歌唱力ではなく、ソングライティングのところが評価されたということですか。

本当に、それ以外は評価するところがなかったと思います(笑)。

転機となったアニメの仕事〜ソロ活動、楽曲提供、アイドルプロデュースへ

――レコード会社の移籍を経て「スィートショップ」は2003年に解散するわけですが、解散の直前にアニメのタイアップの仕事が来たものの、バンドの方向性とはかけ離れているということで、やむを得ずその案件は近藤さんがソロで対応することになったとか。

そうですね。自分の意思とはまったく関係なく。その仕事はレーベルがなんとか引っ張ってきてくれた案件だったと思います。

でも、このことがきっかけとなってアニメ「テニスの王子様」のエンディングテーマ(『ハロー&グッバイ』)に繋がり、『ハロー&グッバイ』は自分の音楽活動において本当に重要な意味を持つ曲になったので、とにかく最初のソロの仕事は大きかったなと思います。

――『ハロー&グッバイ』の持つ意味を教えていただけますか。

あの曲というより、あの仕事があったから、自分のことを作曲家とかアーティストとして信頼してくれる人が増えた、ということですね。

――V6やAKB48、ハロプロなどへの楽曲提供に繋がっていったわけですね。
楽曲提供ではなくプロデュースという形でアイドルグループと深く関わるようになったきっかけはdelaでしょうか。

プロフィールにそういう実績があると、アイドルの曲を書けるひと、という認識に繋がり、delaという名古屋のご当地アイドルグループの曲を、愛知県出身のぼくに書いてほしいという話になり、深く関わるようになりました。でもサウンドプロデュースなので、運営とかコンセプトにはそんなに触れていません。

delaの仕事で何よりも大きかったのは、CDのプレスやデザインを含む流通とかPRも自分のレーベル(miuzic Entertainment)でぜんぶやらせてもらった、ということですね。

もちろん、ご当地アイドルというものがあって、応援してくれるひとが沢山いるということで、別の仕事でご縁ができた静岡でも何かできるんじゃないか、と思うきっかけにもなりましたよね。いま静岡でROSARIO+CROSS(ロザリオクロス)などをプロデュースすることに繋がったと思います。


【MV】 DASH!! / ROSARIO+CROSS
作詞:近藤薫、作曲:近藤薫・黒木迪弘、編曲:黒木迪弘

とにかく自分でやってみる

――近藤さんのお話をお聞きしていると、とにかく自分でやってみよう、というDIY精神が強いように感じます。

確かに自分でいろいろやってみたい、という好奇心は強いかもしれないですね。

「Magical River」の音響も、照明も、スケジュール的に可能であれば自分で実際に入って担当することもあります。最初の入口は自分で把握しておかないと、っていうところがあるので、いまはそうしています。

あとは自分らでやったほうが経費がかからない、利益率が上がる、っていうビジネス的な側面もありますね。

――近藤さんがこれから一番チャレンジしたいことはなんですか。

やっぱりこのライブハウスを作ったことで相当背伸びしてしまっているので。まずは会社を守らないといけないというなかで、欲を言えば「Magical River」で自社のアイドルとかアーティストをもっといろんな人に知ってもらえるようにしたいですね。

ただ、これまでを振り返ると、直感で、あんまりよく考えずにすぐにやってしまうところがあるので…。

――まったく予想も付かないことに取り組まれているかもしれないですね。
引き続き近藤さんの活動に注目させていただきます!ありがとうございました。

(「Magical River」内観)



(miuzic Entertainment リリース情報)



【MV】hallelujah / 室田瑞希 (2024.11.26 Release)
作詞・作曲:近藤薫、編曲:黒木迪弘

(近藤薫さんライブ情報)
【moZku】定期公演 2024年12月編  年末スペシャル!!
2024年12月30日(月)神楽坂天窓
開場18:30 開演時刻19:00
(チケット Ticket Dive

TEXT:KENDRIX Media 編集部
PHOTO:和田貴光

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